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目指す村の姿つくる
「一人っ子よりも兄弟がたくさんおった方がえい」―。安芸郡馬路村で話を聞いた父母の大半から、即座にこんな答えが返ってきた。
「兄弟が多ければ、いったん村外に出ても、だれか一人は地域に帰ってきてくれる」と期待する親もいた。過疎地ならではの村の手厚い助成制度や、地域ぐるみの子育てが日常的に行われていることもプラス材料だろう。
だが、若い夫婦が「この村で子どもを産み育てたい」と思う理由はそれだけではない。
村役場に隣接する教育委員会を訪ねた。
「安芸市や中村市などで育った子どもと、この村で育った子どもが何一つ変わらんかったら、馬路で子育てをする意味がないと思いませんか」
清岡博之教育長(47)は開口一番、そう言った。
村内の小中学生は、馬路地区と魚梁瀬地区の四校を合わせても百四人。
「馬路は田舎です。子どもの数も少ない。けんど、少ないからこそできる、馬路にしかできん子育てのやり方もあるがやないでしょうか」
それを教えてくれたのが、「農協のユズの頑張りだ」という。
CM効果
馬路村農協(南穂積組合長)は、昭和五十年代から本格的にユズの加工品の開発を始め、若者や女性に新たな雇用の場を提供してきた。
また、自然豊かな田舎の良さを前面に出した「村を丸ごと売り込む」販売戦略は、林業不振が影を落とす村のイメージを変えた。
「ユズのCM、見たことがありますろう」。清岡教育長が続ける。
豊かな自然を背景にゆずジュースを持った元気な村の子どもたちが登場する。「過疎かもしれん。田舎かもしれん。けんど、子どもがすくすく育つ元気な村―、そんな古里の情報を発信し続けゆうがです」
テレビCMを始めたこの十年余で、延べ五十人ほどの子どもたちが出演した。
午後七時のゴールデンタイムに流れるCMを、子どもも親も茶の間で見る。
「もう、この村が田舎であることを引け目に感じる人はほとんどおらんなった」「正直言うて林業は大変な状況やし、村の先行きはバラ色やない。けんどユズのおかげで、若い母親がこの村に住みやすさを感じてくれだした。これは地域ぐるみで子育てをする上で、うんと大事なことです」
ユズ産業がもたらした活力は、この十年間で目指すべき村の姿になった。
「子どもが岩場から川に飛び込み、ゆずジュースを飲んで夕涼みをする。そんな馬路ならではの光景をどう守っていくか。みんなが考え始めたがですよ」
学齢期の子どもがいる馬路地区の七十七世帯のうち、四九%に当たる三十八世帯が、昭和四十年代末以降に村や森林組合などがつくった事業所や工場に勤務している。いわば村おこし第一世代だ。
そして、これからユズの加工施設で働く第二世代の保護者の子どもが学齢期を迎える。
◇ ◇
村農協のユズ加工場には連日、県外ナンバーの大型バスが横着けされている。全国各地から訪れた視察団だ。過疎に悩む町村の職員がいれば、国内最大手の食品メーカーの一行もいた。
「一千二百人前後の山村で、なぜこれだけの産業が成り立っていくのか。村づくりの秘けつは」―、だれもがそこを知りたがっていた。
【写真】「ごっくんやりゆうかえ」―。地域の少年野球チームの子どもたちもゆずのCMに登場。元気な村のイメージづくりに一役買っている(安芸郡馬路村馬路)
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