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68万人社会に挑む
 第1部「人口減の世紀」(8)

地域で
続き

真の豊かさを求めて

 一九九〇(平成二)年に全国に先駆けて人口自然減となった本県は、人口減社会の先頭を走っているといえる。

0〜14歳人口の割合(1995年)、65歳以上人口の割合(1995年)  <右図>のように、九五年の時点で十五歳未満の年少人口の割合が既に一〇%以下の自治体が、香美郡物部村と吾川郡池川町の二つ。また六十五歳以上の老年人口は、四〇・五%の池川町を筆頭に三〇%を上回っている町村は十一もあった。今後も年少人口の減少、老年人口の増加、すなわち少子高齢化がさらに進んでいくのは間違いない。

 それに伴って、少々の社会増では追いつくことが困難な自然減が進行する。つまり、国立社会保障・人口問題研究所が二〇二五年と予測した本県の六十八万人社会は、時期は別にして確実にやってくる。

 そのとき本県はどんな姿になっているのか。地域の活力の低下、集落さらには自治体の危機…とさまざまな不安がよぎり、明るい将来像を描くのは決して容易ではない。

 「社会が成熟する中で、本県を含め日本全体にいろんな不安が広がり、不安神経症のようになっているのではないか。経済や生産性などの視点で見ると、確かに人口減社会は暗いイメージになる」

 と指摘するのは、医師でもある県の田上豊資健康福祉部副部長だ。そして

 「これまでの社会は、生産性の低い弱者を切り捨てながら、経済の豊かさを追い求めてきたといえる。例えば、高齢者は社会保障の世話になる側ととらえられてきた。だが、高齢者の九割は元気であり、山では基幹産業を担っている。にもかかわらず、元気な高齢者を生かす仕組みがない」

 とし、「発想の転換が必要だ。それがないと、不安神経症から抜け出せないだろう」と強調する。

 □物差しを変える

 経済的な豊かさを、ひたすら追求してきた二十世紀後半。そのあまり、一極集中や環境破壊などさまざまなゆがみを生じさせ、心の荒廃を招き、多くのものを失い、そして最後には不透明な将来への不安感を募らせた。

 その反省に立つならば、間もなく始まる二十一世紀には、これまでの価値観を大きく変えることがまず必要となる。豊かさの物差しの転換である。

 価値観の多様化がいわれて久しい。経済的な豊かさという主調に大きな揺らぎはまだ見えないが、変化の兆しは既にさまざまな形で表れてきている。豊かな自然の中の暮らしを求めて、本県にUターン、Iターンをする人が増えつつあるのは一つの例だろう。

 もちろん、過疎化が進む地域社会を今後も維持していくためには、若い世代が定住できるような条件整備が欠かせない。働く場の確保、安心して子どもを産み育てていくことができる環境の整備などだ。

 また、中山間地域が持つ国土保全や水源かん養などの公益的な機能を認め、農業の生産条件の不利地域を対象に本年度からスタートした直接支払制度のような仕組みを、さらに広げていくことも必要だろう。

 経済的には決して恵まれていなくとも、さまざまな年代の人たちがそれぞれに生きがいと誇りを持ち、自己実現を図りながら暮らしていくことができる。今後求められるのは、そうした真に豊かな地域社会ではないだろうか。

 人々が心豊かに生活できる「すこやかな社会」を、どうやってつくっていくのか。これまでのように国や県頼みで実現できるものではない。市町村と地域の人たちが知恵と力を出し合いながら、自らが満足でき、個性にあふれた地域をつくり上げていくべきだろう。

 第二部以降では、地域での取り組みや人々の生活を追いながら、「すこやか高知」の在り方を考えていきたい。(政治部・遠山仁

 =第1部おわり


【続き】

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