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68万人社会に挑む
 第1部「人口減の世紀」(3)

ゆがみ
続き

マイナス成長を懸念

 人口減社会に入ると、どんな問題が生じてくるのだろう。経済人口学が専門の大渕寛中央大教授は、まず「労働力人口の減少」を挙げ、「人口よりも早期に、速いスピードで減少していく」と指摘する。

年齢(3区分)別人口割合の推移と将来推計  <右図>を見てほしい。少子化の進行によって今後、十五−六十四歳の生産年齢人口の割合が下がっていく。二〇二五年には五九・五三%と、一九九五年に比べ一〇ポイント以上も低下する。この年齢層の減少は、労働力人口の減少に直接つながる。

 労働省の一九九七年の推計によると、同年に六千三百八十四万人だった労働力人口は、二〇〇五年の六千八百七十万人をピークに減少し始める。そして二〇二五年には六千二百六十万人と、ピーク時より六百万人以上も少なくなる。

 しかも、年齢構成が大きく変化する。九七年には十五−二十九歳が二三・一%、六十歳以上が一一・四%だったが、二〇二五年にはそれぞれ一七・三%、二一・二%。若年労働力が減って、六十歳以上の労働力が急増するわけだ。

 「労働力不足は高齢者と女性が埋めることになる。外国人労働者の移入の話も出てくるだろう。ただ、今後不足するとみられるIT(情報技術)関連や介護のマンパワーにどう対応するのかが大きな問題だ」

 と大渕教授は強調する。

 県内でも深刻な労働力不足が予想されている。

 県企画調整課が九六年にまとめた「人口減少・高齢化の中での行政システムの在り方の検討(中間取りまとめ)」と題したリポートがある。内部での検討の素材として作ったものだ。

 それによると、労働力人口の減少に伴い、就業者総数は九〇年の約四十万人から、二〇一〇年には約三十五万人に減少。五十歳未満の就業者が大幅に減少する一方、六十五歳以上が増えていく。さらに地域的には県中央部の減少率はあまり大きくないが、東部や嶺北地域では四割以上の減少が見込まれる。

 □可処分所得減る

 経済成長への影響も懸念されている。大渕教授は「これまでは需要と供給が相まって経済成長が続いてきた」とした上で、

 「供給面では労働力や資本形成、技術開発などで制約を受ける。一方、需要については消費が六〇%を占めているが、人口減が消費市場にいい影響を与えるはずがない。モノが売れなければ、投資もない」

 「その結果、経済成長はスローダウンせざるを得ない。一%前後の成長率がせいぜいだろう。下手をすれば、マイナス成長もあり得る」

 と厳しい見方をする。

 そして社会保障負担の問題がある。今後、高齢社会の進行に伴い、年金や医療、福祉などの分野で、働く世代(現役世代)の負担が増大することになる。

 厚生省の九七年の推計によると、九五年度に六十五兆円だった社会保障給付費は、二〇二五年には二百十六兆−二百七十四兆円にまで膨らみ、国民所得に占める割合は一八・五%から二九・五−三五・五%に上昇する。これに税負担を加えると、いわゆる国民負担率は五〇%を超えるとみられている。

 逆にいえば、それだけ働く世代の可処分所得が少なくなる可能性があるわけだ。生活の向上に結び付かないとなると、働く意欲がそがれる恐れさえある。大渕教授は年金制度を例に

 「現在の賦課方式では、働く世代の所得が高齢者に移転される。払う額は多いのに、自分がもらう段になるとその額は少なくなってしまう。構造的には医療も同じだ」

 とし、制度改革の必要性を指摘する。

 今春の年金制度の改革や現在、臨時国会で審議されている医療保険制度改正関連法案は、将来の社会保障負担の増加をにらんだものではある。ただし、決め手はまだない。


【続き】

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