漫画界に多大な功績を残した横山さんだが、漫画だけではやはり、その魅力は語り尽くせない。
多彩な趣味に発揮される才能と、文化人をはじめ幅広い層の人たちとの交流は、神奈川県鎌倉市の自宅に人やものが集まることによって、一層質が高められ、味わい深いものになっていった。
四階の「わが遊戯的世界」は、鎌倉からアトリエ、あずまや、ホームバー、鉄道模型などをそっくり移設した隆一ワールドそのものだ。おもちゃ箱をひっくり返したような、雑然とした展示の中にこそ、巨匠の遊び心が見えてくる。
アトリエは、カーペットや窓のサッシにまで絵の具のにおいが染みついた空間を再現。無数の筆が立ち、描きかけの絵やお気に入りの車の模型などが今も主人の帰りを待っているようだ。近寄ると、横山さんの声が流れてくる。
「絵描きが長生きするのは息を詰めるからじゃないかね」
声は、隣のホームバー「グラ」からも響いてくる。「作家はみんな飲みに来ましたからね。大佛さん、川端さん、永井さん…。みんなにもらった酒も入ってる」
やや暗く狭い空間に、さまざまな酒の瓶が並ぶ。なぜかワニのはく製までいる。ここは酒仙・横山さんの隠れ家だった。瓶の底に残ったウイスキーを何本も集めて作る「隆一ブレンド」。これが実にうまいとか。
圧巻は「隆一GARAGARA」だ。何種類もの鉄道模型をメーンに、欧州の街並みのジオラマ、トランプのビル、ねじのコレクション、バリ島の影絵など、数えきれないほどのおもちゃが一見無造作に、しかし独特の世界を形づくって陳列されている。
GARAGARAとは、赤ちゃんが最初に手にするがん具、ガラガラのことだ。納得。
【写真】薄暗く、狭い空間に酒瓶やコースターがびっしり。隠れ家的なホームバー・グラ(高知市九反田の横山隆一記念まんが館)
(平成14年4月4日付夕刊掲載)
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