二・二六事件が起き、次第に世相が暗くなってきた昭和十一年に誕生したのが、横山さんの分身とも言えるキャラクター、フクちゃんだ。
明るく、元気でわんぱくなフクちゃんと、ユーモア、ウイットの効いた漫画は、戦前の世の人をほのぼのとした気持ちにさせた。戦後も毎日新聞で昭和三十一年から四十六年まで連載され、通算五千五百三十四回の記録を残す。
まんが館の「フクちゃん通り」は昭和の町並みが再現され、フクちゃんと遊ぶことができる空間。子どもはもちろん、実年世代も、昭和の「あの日」に帰ったような懐かしさを覚え、フクちゃんと手をつなぎたくなるはずだ。
まず腕試しはジグソーパズル。フクちゃんをうまく壁面に埋め込むと、四コマ目の漫画が読める。続いては、のぞき穴。あちこちいろんな高さに開いた穴をのぞくと、中でフクちゃんが待っている。
郷愁たっぷりなのは、紙芝居。自転車の荷台に木製の枠が載り、ハンドルを回すとフクちゃんの「かいていたんけん」が始まる。土管の中をのぞくと、やっぱりフクちゃんがいるし、犬のシチ公の頭をなでると、何かが起きる。
横山さんは「フクちゃん」のことを「瞬間、瞬間の随筆のようなものだ」と話していた。「フクちゃんは私自身で、またおじいさんも私。一人二役だった」と。だからこそ、昭和を生きてきた人にとって、フクちゃんの世界が身近に感じられるのだろう。
通りを抜けた右手は、横山さんがアニメーションに挑戦した「おとぎプロ」のコーナー。「たたみプロ」とも呼ばれた、家内工業的スタジオから生まれた、「ふくすけ」「ひょうたんおばけ」「おとぎの世界旅行」の三作品が定期的に上映される。
【写真】パズル、紙芝居、かくれんぼと、フクちゃんといろいろ遊べる「フクちゃん通り」(高知市九反田の横山隆一記念まんが館)
(平成14年4月3日付夕刊掲載)
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