ひとつの大家族である「高知家」が、ますます元気な家族となるよう、
さまざまな発信をしてまいります。
協力:魚と山の空間生態研究所
昼食はしゃえんじりのお弁当
しゃえんじりのおかみさんたちは、今回の内容を考慮して、漁獲量が少なくなったミナミテナガエビやヒラテテナガエビを入れてくれていました。
四万十源流茶 応援スター 高橋 寿宏さん
幡多地域を棲みかとする在住型生態学者。博士(学術)。川の中かパソコンの前にいることが多い。流域保全・再生活動に従事。魚と山の空間生態研究所代表。高知工科大学非常勤講師。
 まだ暑さが残る9月11日に行われた、2回目の「こうち体感ツアー」。今回の体験テーマは、四万十川の支流・黒尊川の生き物にふれる「獲って学ぶハビタット」。ハビタットとは「棲みか」という意味です。高知市内から車で約3時間、四万十市西土佐の玖木公民館に、7組の親子が集まりました。
 講師は、テナガエビ類の研究や水辺の自然再生を行っている山下慎吾博士。日本全国の川で生き物の生態調査や環境保全などに携わり、最も素晴らしい川がある高知県で研究を進めたいと考え、10年前に帰ってきました。
 午前中は、黒尊川に棲む生き物たちのスライドを見ながら山下さんのお話を聞く座学。黒尊川は、流れの速い早瀬、ゆるやかな流れの平瀬、深く落ち込む淵が規則正しく繰り返す川。水が透明で川底にもよどみがなく、たくさんの生き物が棲んでいます。その多くは稚魚の時代を海や汽水域で過ごし、成長して何十㌔も川を遡上してくるといいます。
 海水と淡水が混じる汽水域は、流れも緩くエサも豊富で、稚魚の生育に好適。しかし、大型魚も生息しているため、自分が捕食される危険も大きい場所です。流下したテナガエビ類の幼生やハゼ類は、稚エビや稚魚に成長して、小さな体で長い距離を一生懸命遡上するのです。その移動距離は生き物の種類や環境によって異なります。四万十川の河口から口屋内までおよそ30km、口屋内から玖木まで約10km。ここに棲むヌマエビ類やハゼ類などは約40kmを上ってきたことになります。「まだまだ上流へ登っていく生き物もいます」と山下さん。上流に行くほど敵が減るものの、水温が低くエサも少ないため、生きる環境としては厳しくなるといいます。
 一方、カワムツなどコイ科の魚や、アカザ、サワガニなどは、一生を川で過ごします。石の間に棲む習性のあるアカザは、少しでも泥がたまるような川に棲むことはなく、きれいな川の指標となっている魚です。
 午後は川に入って生き物を獲るプログラム。山下さんからは、「川の深い所と浅い所、流れの速い所と緩やかな所では棲んでいる生き物が違います。いろいろな所を探して“レア物”を見つけてください」とアドバイス。ライフジャケットを装着し、網とバケツを持っていざ川の中へ! 川底まで見える水の透明度に驚きながら、魚を追います。石を裏返し、重なった枯れ葉をめくって「捕まえた!」と歓声が上がったのは小さな透明のエビ。水の中を見ることに目が慣れると、いろいろな生き物が見えるようになります。
 水中メガネをつけて子どもに負けないくらい夢中になっていたお父さんが捕まえたのは、トンボの幼虫のヤゴが口からはみ出している、まさに捕食中のサワガニ。別のお父さんは大きなモクズガニやボウズハゼ、アカザを捕まえ、子どもたちを驚かせました。
 1時間半ほど川探検を楽しんだ後、各自の成果を持ち寄り、種類別に分類。全部で15種類の生き物が捕獲できました。一番多かったのはヌマエビで、中には卵を抱いているメスもいます。魚を丸のみにするという「ドンコ」、吸盤で岩に吸い付くという「ボウズハゼ」、細長い形をした「カワトンボ類のヤゴ」、ゲンジボタルなどのエサになる「カワニナ」、高知ではゴリと呼ばれる「ヌマチチブ」など、色も形も違うバラエティ豊かな生き物たち。跳びはねる魚やエビを手で触り、感触を確かめました。
 「雨が降って流れが速くなると、岩陰でじっと身を潜めますが、台風など川底を洗うような激流になると下流に流され、再び長旅をして上ってきます」という山下さんの言葉に、自然の厳しさを感じる一同でした。