ひとつの大家族である「高知家」が、ますます元気な家族となるよう、
さまざまな発信をしてまいります。
蜂谷 潤さん
職 業/ 一般社団法人
うみ路 代表
移住地/ 室戸市
出身地/ 岡山県岡山市
移住年/ 2005年[高知大学入学]
2009年[室戸市移住]
 鮮やかなブルーの海。ここは室戸の高岡海岸にある、陸上の養殖施設です。養殖タンクの中では、スジアオノリが水流に舞いながら育っていました。経営者の蜂谷さんは岡山出身で、高知大学農学部栽培漁業学科を卒業後、いまは大学院に籍を置いています。
 大学生の時に恩師のもとで室戸へ通って活動を始め、ノリ養殖の排水を利用したアワビの養殖で、「学生ビジネスプランコンテストキャンパスベンチャーグランプリ」へ応募。そして四国大会最優秀、さらに全国大会では文部科学大臣賞を受賞しました。その評価を受けて、2013年に室戸で「うみ路」を起業しています。虹色の美しい殻を持つトコブシを養殖したり、室戸ブランドの「むろっと」を立ち上げ、メジカの加工品としてコンフィを商品開発するなど、海洋資源の地域ブランド化は今後も広がりそう。
 大学3年生では研究者として就職活動も経験しています。「新ビジネスは成果が出ないと皆やりたがらないので、成果を出して誰かに渡したかった」ため、大学院に入ってから決意し、経営者となりました。
 そんな蜂谷さんを室戸の人たちは応援してくれ、「上手くいくまで、飯は食わしちゃる」と言ってくれたほど。身近に起業した親しい先輩がいることも、一歩を踏み出すきっかけになったそうです。
 2014年10月、高知大学が「大学発ベンチャー」企業の認定制度を設けて最初の3社を初認定しました。その1社に選ばれたのは蜂谷さんの会社です。この認定には研究や資金面での支援も含まれるとあって、地域に貢献するベンチャーへの大学側の期待度がうかがえます。「大きいことをボンとやるより、ゼロから1を生み出す種の部分をいっぱい創っていきたい」というのが蜂谷さんの信念です。
 「やりたいことは2つです」と話す蜂谷さん。一つは、魚介類の陸上養殖にともなう排水の浄化力などが期待される、藻類のプロフェッショナルになる道です。
 そしてもう一つは、「室戸への恩返し」。昨年から中心になって年2回開催しているイベント、「室戸まるごとBBQ(バーベキュー)」も、その思いから発しています。室戸で一次産業やものづくりに携わる人たちと、室戸の外からやって来る人たちが交流する1泊2日のツアーです。「僕みたいな、何かしたい外の人と、やり方がわからない意欲的な地域の人がつながって、プロジェクトが動きだしたらいいと思ったんです」。室戸まるごとBBQは参加者を公募しません。招待のみで県内外から毎回150人もが自前で集まり、クリエイターたちも重要なメンバーです。初日の夕食がバーベキューなのは、食材や炭などを提供する生産者みんなが、胸を張れるように。蜂谷さんたちもアワビを提供します。
 世代や職種を問わず皆が話し合える貴重な場を細やかに「つなぐ」仕掛けを織り交ぜたツアー。「食の背景がわかると、食べてもただの芋じゃない」。翌日は10人以下の少人数で生産者を訪ねます。自然発生的に仲良くなって、「じゃあ何か一緒にやろうよ」となったり、商品が生まれることもあるとか。
 「恩返しと、僕が求められている役割が重なるところも多いです。イベントは人がつながって、行動へのモチベーションが上がってくる。そのゴールは決まっていなくても、一緒に地域の思いを一つ一つ形にしていきたいですね」
「研究がきっかけとなり、室戸へ来て、 “おもてなし”を受けて現在があります。水産加工に経験がなかった学生の僕に施設を貸して下さった方。市役所は高知大学と共同研究をする予算をつけてくれました。家に招かれて家族のご飯を一緒に食べさせてもらったことも数え知れず。現場を訪ねて知り合った生産者の皆さんが受け入れてくれたことも、イベントや商品開発のきっかけになりました。室戸に育ててもらったことに感謝しています」
高岡地区にあるスジアオノリの養殖タンクで、共同経営者の矢部太郎さん(左)、大学生の房前尊盛さん(右)と