ひとつの大家族である「高知家」が、ますます元気な家族となるよう、
さまざまな発信をしてまいります。
 「高知家の未来会議」のキックオフは、移住を通して見えてくる高知家についての座談会。「高知家プロモーション」の成果と今後の展開、これからの高知家について、尾﨑正直高知県知事、移住者の市吉秀一さんと地場裕理子さん、移住促進に取り組む川村幸司さんに、高知新聞社社長・宮田速雄がお話を伺いました。
宮田
 昨年6月から始まった、高知家プロモーション。地産外商、観光客誘致、移住促進を連携し、高知を売り出そうとしています。この1年の成果をお聞かせください。
尾﨑
 うれしかったのは、高知県の好感度調査の結果です。昨年の秋に実施した調査では、5年以内に高知県に来たことがなく、高知家プロモーションを知らないと答えた人の好感度は55%。5年以内に高知県に来たことがあり、かつ高知家を知っていると答えた人の好感度は92%でした。高知県に来たことがあるという経験と高知家プロモーションの認知で大きく上昇していることが分かりました。
 もう一つうれしいのは、高知家バッジ。表札型と風呂敷型と合わせて、6月末までに13万2千個超を着けていただいています。たくさんの方がこの取り組みに賛同してくださっているということです。
宮田
 移住してこられた市吉さん、地場さん、移住を受け入れる側の川村さん。この高知家プロモーションをどう見ていますか。
市吉
 私の周りには高知家プロモーションをきっかけに高知を知ったという人がたくさんいます。高知に興味を持つ関西の仲間を見るにつけ、「一度来れば好きになる」と実感しています。
地場
 「家族」という言葉にグッときました。どこに行っても、ごはんを食べよう、お酒を飲もうと誘われて、移住してきてさびしいと思ったことが一度もありません。本当に家族のようにあたたかいですね。
川村
 田舎暮らし体験ツアーなどで来た人に、「高知家って何ですか?」「どうやったら入れるんですか?」と聞かれることがあります。趣旨を説明するとともに、「高知のことが好きになり、出会った人と心のつながりができればあなたはもう心族(親族)で高知家の一員です」と答えています。移住ではなくとも、高知を第二のふるさとと思い、長い休みのときに来てくれる心族ができました。
宮田
 地方は人口減が進み、高知県も年間5千~6千人減っています。その中で、昨年は270組が移住。今年は400組、来年は500組を目標に推進しています。達成に向けての具体的な戦略を教えてください。
尾﨑
 昨年度の移住者の実績がその前の年の倍以上に増えたのはうれしいことです。人口減少社会といわれる状況の中で、自然減そのものをすぐに増に転じるのは人口構造もあるので困難です。その中で暮らしをどう守っていくかが重要であり、移住によって少しでも痛みをやわらげること、また人財の誘致によって新しいことにチャレンジすることが大切です。
 戦略としては三つ。移住キャンペーンを実施している高知県という認知を上げること。移住を歓迎し、具体的な受け入れの仕組みがあることを伝えていきます。
 次に、「求めている人」を明確にし、その人財(人材)にターゲットを絞った呼び掛けを行うこと。地域の人々とのコラボで、そこに雇用が生まれれば、若い人たちが残れます。
 三つめは、ものの売り込みや観光振興など、すべての施策が移住促進とも連動し、相乗効果でより良い循環を作り出すことです。
宮田
 今後の移住促進には何が必要だと思いますか。それぞれの立場でお聞かせください。
川村
 魅力的な暮らしをしている地域の方や移住者たちが、都会に行って話しをすることが必要です。例えば、土佐町に林業の筒井さんという人がいます。山で彼の話を聞くと誰もが感動します。東京で、「今度は現場(山)で話しをしよう」と言えば、林業や山間部での暮らしに興味を持つ人たちが必ず現れます。
地場
 大学院で地域研究をしているときに、フィールドワークの一環として初めて高知に来ました。その後1年半の間に度々訪れ、短期滞在もしました。その間に買い物や病院など生活に必要な情報を得られ、不安なく移住できました。移住を考える人には、3日でよいので実際に暮らしてみることをお勧めします。
市吉
 高知にはサーフィンをしに来ていて、毎週通ううちに食材の魅力に気が付きました。当時は月の半分を高知で、半分を大阪で過ごす生活。高知では野菜の生産者さんを訪ね、いろんな生産者さんを紹介していただきました。高知への移住を決めた最大の魅力は人。もてなしの心と情の厚さにほだされました。そこを感じとってもらえるアピールが必要ですね。
宮田
 長く住み続けるうちに、地域とのかかわりに難しさを感じる人も出てくるでしょう。川村さん、移住者が定着し、地域の活力となるためにはどうすればよいでしょうか。
川村
 当団体が考える、幸せの移住三大要素は「結・職・住」。人との結びつき、仕事、住まい、この三つがそろうことが、継続的な移住の土台になります。その中でも特に重要なのが結です。移住してすぐのころはうまくいっていても、住み慣れるにつれて、都会と田舎での習慣や文化の違いから違和感を持つことは移住者、地域の方、双方に大なり小なり必ず出てきます。先輩移住者やUターン、地域の世話役などが間を仲介し、翻訳する作業をすればスムーズに運びます。私たちのような、情報を整理し、結を取り持つ人がもっと出てくればいいですね。
尾﨑
 きれいなところ、食べ物がおいしいところの先には良い人がいて、人のネットワーク、信頼関係がある。まさに結であり、「みんなぁも高知家の家族にならん?」という高知家のコンセプトですね。
 地域や人を知るには、旅行だけではないお試し移住が重要になってきますので今後もその機会を増やしていきたいと思っています。
高知県知事
尾﨑 正直
高知県観光コンベンション協会
地場 裕理子さん
2011年4月に移住。高知県観光コンベンション協会プロモーション部にて県観光の広報を担当。神奈川県出身。
れいほく田舎暮らしネットワーク
川村 幸司さん
2006年に土佐町にUターン。妻と共にカフェを営む。れいほく田舎暮らしネットワーク事務局長。
ローカルズ代表
市吉 秀一さん
2013年5月に移住。ローカルズ代表。県外飲食店に野菜を提供するほか、野菜の加工品をブランド化。大阪府出身。
宮田
 市吉さんは高知県産の食材を扱い、東京のレストランに供給したり加工品のブランドを立ち上げたりしておられます。県産品の魅力、それを県外に販路拡大するために必要なことは何でしょうか。
市吉
 東京に全国からいい食材が集まってくる中で、私の扱う食材が一番だと言っていただけるのは、誰がどう作っているか分かるから。最終的には人と人のつながり、これも結です。
宮田
 地場さんは高知県観光コンベンション協会で、観光情報発信の最前線におられます。これからどんなことをしたいとお考えですか。
地場
 高知県に来たことがない人を呼び、リピーターの方々を大事にしていきたいです。高知へは海や川を求めて来る人もいれば、人に会いに来る人もいます。私に会いに初めて高知に来た友達が、2回目は「この前お世話になった宿のおかあさんに会いに来た」と言いました。そこが高知の実力。この底力をどう活用していくかが鍵です。
尾﨑
 高知県は才能にあふれている。例えば、東京で行われているスーパーマーケットトレードショー。投票で選ばれるいいものベスト30に、一昨年、高知県の商品は7品目、昨年は5品目選ばれて1位となりました。東京の地産外商公社の成約件数も毎年伸びています。
 一番大切な心を込めたものづくりが都会の人を引き付けたのだと思います。その一方で、都会の市場で生き残る術を備えていかなくてはなりません。外の人との交流によって商品が磨かれ、そのプロセスの中で地産外商の力が付いていくのだと思います。
宮田
 今年の高知家プロモーションのキーワードは「おすそわけ」。県全体で取り組んでいかなければなりません。県民は何をすればよいでしょう。
尾﨑
 高知県は一つの大家族であり、家族が家族のために心を込めて作ったものが多々ある。みなさんが知っているそれらのものを、ぜひとも県外の人にそれぞれのやり方でおすそわけしてほしいという思いです。
 観光も然り。高知にはテーマパークはありませんが、自然があります。自然を観光地に仕立て上げるには人の知恵が必要であり、屋形船、手ぶらバーベキューなど、観光客が川や人とのふれあいを楽しめる仕組みが大切です。おすそわけは、単に「行ってみて」と紹介するだけでなく、体験したり味わったりすることができるよう寄り沿うことだと思います。
市吉
 ガイドブックやインターネットで情報を得た旅よりも、知り合いがいて、その人の好きな高知を案内してもらう旅の方が楽しいですよね。高知県民は高知に対する愛情が深いです。県民それぞれがホストとなり、おすすめの高知を体験してもらうのもおすそわけです。
川村
 まずは地域で暮らす私たちが収穫したての美味しい食べ物を頂く。その上で大切なあの人にも食べてもらいたいと、おすそわけをすることが大事。高知は、そういう実生活の豊かさは高いと感じます。自分が満たされているからこそ、幸せはシェアできる。そこから自然とあふれ出る魅力が「あそこに住みたいな」と人を引きつけてゆく要素になるのではないでしょうか。
宮田
 今後向かうべき、幸せな高知県のイメージをお聞かせください。
川村
 一人当たりの県民所得が46位の高知県。ある移住者が、「地理的条件も含め経済的発展は難しかったかもしれないが、それと引き換えに残っているもの、守られてきたもの、育まれてきた豊かさがある」と言っていました。そこにこれからの高知の未来があると思います。ぜひ子どもたちにバトンタッチしたいですね。
市吉
 高知県は1周遅れの最先端。独立独歩、四国の中でも独特です。イタリアだったらスローフード、ブータンだったら幸せの国というオリジナルのコンセプトがありますが、高知は「おもてなしのあたたかい心」。子どもが生まれた今、その文化を継承していきたいです。
地場
 おいしい食べ物があり、楽しいお酒を飲み、指標から見る低迷とは裏腹に、暮らしは豊か。高知の人は指標的な側面を客観的に受け止めながらも、違うものさしを持っています。高齢化が深刻ですが、そのお年寄りたちが作り上げてきてくれた高知。子どもたちが誇りを持てる高知県になればいいなと思います。
尾﨑
 子どもの頃、高知県は平野面積割合が日本一少ない県だと習いました。今は森林面積84%を誇りにしています。コンビナートはありませんが、美しい海があり、おいしい魚が食べられます。弱みを逆手にとり、強みは強みとして素直に見て発信することが大事であり、今はそういった考え方に追い風も吹いています。
 究極の強みは「人の良さ」。全国のみなさんに認めていただけるよう、さらなるチャレンジを続けていきます。
市吉
 高知の女性のパワーはすごい。私もはちきん磁石に吸い寄せられた一人です。ぜひとも県外から優秀な男性をどんどん呼び込んでほしいです。(笑)
宮田
 移住を呼び掛ける上で大事なことは、暮らしているわれわれが「豊かさ」をきちんと認識し、誇りを持って生きている姿。それをしっかり見せていくべきでしょう。
尾﨑
 高知家プロモーションを通じて、高知の強みを改めて認識し、発掘し合い、それを対外的に発信して新たな活力を招き入れる。それが経済指標の改善や人口減少社会の中で県民の皆さんの生活を守ることにもつながっていくのだと思います。
高知新聞社 代表取締役社長
宮田 速夫