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第13回黒潮マンガ大賞 審査経過

 第十三回黒潮マンガ大賞(高知新聞社主催)には、コマ部門に七百八十六点、ストーリー部門に九十四点が集まった。力作が多く集まったため、やなせたかし、青柳裕介(両氏は事前審査)、岩本久則、はらたいら、矢野徳の五氏による審査は例年に増して熱がこもった。「両部門とも年々、絵のレベルが上がっている。個性的な作品も多い」「アイデアにもうひとひねりあったらなあ。もったいない」などと、作品を前に白熱した議論が続き、審査時間はいつもより長めの約四時間にも及んだ。審査経過を振り返りながら、各審査員の講評をまとめた。


【コマ部門】 大激戦の大賞選考

 コマ部門は三百四十七人(県外三百二十人、県内二十七人)の応募があった。

コマ漫画の大詰めの審査。岩本久則、矢野徳、はらたいらの3氏(左から)が高い水準の作品群の中から入選・入賞作を選び出した(東京・赤坂)  大賞選考は激戦。大リーグ中継を見る家族がついイチローと同じポーズを取る東京都新宿区のふきやま朗さん(67)の「大ファン」、女人禁制の土俵に上がらないよう女性が宙づりになってカップを持ってくる広島県吉田町の木下義信さん(49)の「これならOK?」、シルバー旅行中の参加者が“主役”の入れ歯をしっかり洗浄して眠る埼玉県桶川市の都竹重二さん(72)の「グルメ旅行」の三つどもえになった。

 審査員の悩ましい表情が並んだが、大賞を射止めたのは木下さん。「絵がシンプル。内容を大胆に削りポイントを絞っている」(矢野氏)、「大阪府知事と日本相撲協会の“騒動”をうまく料理している。構図もいい」(はら氏)との評が決め手になった。

 佳作は「絵だけでなく題名が抜群」(岩本氏)、「おかしいが哀愁が漂う」(やなせ氏)と称賛された都竹さん。「描くべきことをしっかり描いている。質が高い」(矢野氏)、「奥さんの持つ大根が生きている」(青柳氏)と好評だったふきやまさんは惜しくも入選にとどまった。

 他の入選作にも高い評価が寄せられた。水枯れした谷に色を塗って見せかけの清流を残そうとする南国市の沢本英世さん(61)の「日本最後の清流」は、やなせ氏が「シュールだけど、現実感がある」。戦車に囲まれた仏像に僧が泣きながら目隠しをする京都市の鄭仁敬さん(27)の作品は、岩本氏が「僧の表情がいい。この戦車隊には必ずバチが当たるだろう」と推した。

 また、大蛇がモグラの穴を伝って追いかける福岡県北九州市のキクチマサフミさん(60)の「早わざ」は「絵のリズムがいい」(はら氏)。同僚がパソコンを開く中、一人だけ弁当を開く東京都世田谷区の中原ミキオさん(61)の「リストラにあう理由(わけ)」は「他の構図では絵が生きない。立体感がいい」(矢野氏)。

 全体的なレベルの高さに感心した審査員だが、岩本氏は「もうひとひねり足りない残念な作品も多かった」と苦言も呈していた。

 【写真】コマ漫画の大詰めの審査。岩本久則、矢野徳、はらたいらの3氏(左から)が高い水準の作品群の中から入選・入賞作を選び出した(東京・赤坂)


【ストーリー部門】 本県勢が上位独占

 ストーリー部門には九十人(県外七十二人、県内十八人)から九十四点が集まった。今回は、青柳氏が「過去に受賞経験のある人には、受賞作を超えたところをポイントとして求めたい」という選考基準の新たな視点を示したため、他の審査員と微妙な温度差が生じる場面もあった。

 社会問題化している引きこもりをテーマにした、吾川郡春野町のあさきゆめさん(22)の「ひきこみ―ひきこもり進化系―」は、青柳氏が「現代社会を奇妙にえぐり出している。絵もこの話には合っている」と大賞候補に推薦。

 しかし、他の審査員からは着眼点を評価しつつも、「もう少し結末にインパクトがあれば、本当の文明批評になるが…」(矢野氏)といった意見が出て、最終的には佳作にとどまった。

 大賞をめぐって意見が分かれる中、審査員五氏がそろって評価したのが、吾川郡伊野町、小松真也さん(19)の「ヤマンボウ」。

 「最後の二コマをもっと考えてほしい」(青柳氏)「絵にもう少し動きがほしい」(はら氏)という注文もあったが、ほのぼのとしたタッチで失われゆく里山の保護を訴える内容には「物語の運び方がうまい」(やなせ氏)、「表現力がある」(岩本氏)と好感を集め、二年ぶりに本県在住者が大賞に輝いた。

 入選でも県勢が健闘。高知市の池内達也さん(18)の「WISH」を、岩本氏が「十八歳では描かないテーマ。大したものだ」と絶賛すれば、はら氏は高知市の松岡俊吾さん(23)の「昔日の忘れもの」を「ストーリーと絵がぴったり合っている」。「猫は見ていた」で応募した吾川郡春野町のフナムシさん(52)は入賞五回の貫録を見せつけた。

 新潟県南魚沼郡六日町の小山良夫さん(41)の「ピッキー―僕は失恋キューピット―」は、「プロとして通用する」(岩本氏)と審査員をうならせた作品。熊本市の矢部舞華さん(18)の「風鈴 フウリン」も「作品として完成されている」(はら氏)と高い評価を得た。

 今回は「有能な才能を持った若者の作品が目立っていた」というのが審査員の共通した意見。しかし、青柳氏は「ストーリーの構成力に比べ、説得力、演出力が弱い」と指摘し、さらなる精進を促した。


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