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平成13年7月上旬。出発時、高知市は梅雨の合間ながら、みごとに晴天。宿泊地の中村市も入道雲がモコモコと盛り上がる夏空だった。季節的にもベストで、クジラに遭遇する可能性は高い。寝不足だと、船酔いしやすいので、興奮を押さえながら早めに床に着く。 夜半に降り出した雨も小康状態になり、当日は曇り。“日焼けしなくてすむぞ”と気楽に考えながら、大方町の入野漁港のホエールウォッチングセンターに午前7時50分頃到着。 ところが……。
どうやら船が出ない模様。何でも想像以上に台風4号で海が荒れていて、仮に出港しても、まず鯨には出会えないだろうという。出港する船主さんはいないかと、連絡を取ってくれていたセンターの担当者も、「沖へ出ても、船酔いするために高い料金を払うようなもんでー」と冗談とも慰めともつかない言葉。
しかたなく、しばらくセンター内を見学。冊子などでクジラについて学ぶ。
通常、土佐湾にいる代表的な種類は比較的大型のニタリクジラ。ほかには小型のハナゴンドウがよく目撃される。ニタリはまれに、自分から船に近づいてくることがあり、その迫力には圧倒されるそうだ。ブリーチング(ジャンプ)で海面から飛び上がることもある。ベストシーズンは子育てのために沿岸部へ近付く5月から、夏場8〜9月ぐらい。しかし夏場でも台風で荒れる時季は遭遇率は低くなる。今年の遭遇率は現在まで、7〜8割と高いということだ。 センターの壁には、ホエールウォッチングに来た有名人のサインや写真が飾られている。修学旅行生も全国から来ているようで、ホエールウォッチングの人気が高いことを再確認する。 来訪者が感想などを書き残しているノートをのぞく。「見えた」という感動の言葉が大多数。なかには、“見えなくて残念”、“船酔いで死にそう”というコメントも散見された。 センター二階に置かれているミンククジラの骨格標本を見せてもらう。4年前に入野海岸にうち上がった個体だそうだ。ミンククジラは土佐湾では比較的珍しい種類で、弱った個体が迷い込んだまま浜に打ち上げられたらしい。全長は約12メートル。骨格だけでなく、心の底から、クジラの生きている姿を見てみたいと願う。だが…。
天気予報では、隣の愛媛県はかなりの荒れ模様で、午後には高知県の天気も大きく崩れるという。幡多路と高知市を結ぶ国道56号、JR土讃線ともに、強い雨の時には通行止めの可能性がある。運が悪ければ、今日中に高知市内に帰れない。しばらく岸壁から恨めしく海を眺めていたが、結局今回はあきらめることにした。自然が相手では、物事は必ずしも人間の思う通りには行かない。翌日、台風4号が中国南部に大きな被害を与えたとニュースが告げていた。(I)
【写真中】ミンククジラの骨格標本。骨から全体像を想像するとクジラの大きさが分かる 【写真下】ホエールウォッチングに使用される船。船首部分に席が用意される |