森 栄伸さん(30) 高知市
「歯科技工士(しかぎこうし)」という仕事を知っていますか?
歯医者に行った時、虫歯を削(けず)った後に銀歯(ぎんば)を詰めますよね。あの銀歯を作っているのが僕たち“歯の職人(しょくにん)”。入れ歯や差し歯などもともとの歯の代わりはほとんどが技工士の手作りです。「銀歯は歯医者さんが作っている」と思っていた人もいるんじゃないかな。
手に職を付けようと思い、専門(せんもん)学校で勉強して国家試験(しけん)を受けました。でも、大変だったのはその後の修業時代の2年間。思い出したくもないほどしんどかったです。
人の顔が一人ひとり違(ちが)うように、求められる人工歯も一つ一つ形が違う。削る作業はミクロの世界で、一瞬(いっしゅん)でも手元が狂(くる)うと最初からやり直し。夜中も日曜も仕事がたまり、「もう、これぐらいの出来でいいかな」とも思いましたが、患者(かんじゃ)さんの口に入る大切な歯。あのころ、自分に負けずに納得(なっとく)いく物を作ったから、今も仕事を続けられているんだと思います。
「食べる」ことは人間にとって大切なこと。「物がかめるようにして」と歯医者に来たおじいさんが入れ歯をして喜ぶ姿(すがた)を見ると、やりがいを感じます。いい歯を作るには患者さん、治療(ちりょう)する歯医者さんらとの連携(れんけい)が重要。技工士は裏方(うらかた)という印象がありますが、患者さんと接(せっ)して希望を聞き、口の動きを見るのも大事(だいじ)だと思います。
手先を使う細かい作業で「不器用(ぶきよう)だと無理(むり)」「センスがいる」という人もいますが、センスは持って生まれたものじゃなくて、身に付けるもの。人間のもともとの歯にいかに近づくか、常に勉強し、技術(ぎじゅつ)を広げる努力のできる人なら大丈夫(だいじょうぶ)ですよ。
【写真】人工の歯を削る森さん(高知市竹島町の仕事場)
(高知新聞 2003年06月15日朝刊)
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