【9】証人尋問 2度目の踏み絵
(2005年3月25日・朝刊)
捜査費問題で県警は現場の捜査員に「踏み絵」を2度踏ませた。1度目は幹部が口封じし、同僚捜査員が立ち会った高知地検の事情聴取。2度目は高知地裁で行われた証人尋問だった。
市民オンブズマン高知のメンバーは、地検への刑事告発と並行して「捜査費関連公文書の非開示処分取り消し」の民事訴訟を起こした。高知地裁は元本部捜査一課総括補佐と捜査員2人(1人はOB)の証人採用を決定。尋問は16年11月5日に行われた。
捜査費問題は全国の警察で発覚しているが、情報開示訴訟で現職警察官が法廷で証言するのは初めて。どのような証言をするのか注目された。 ■「守秘義務」盾に
県警の動きも慌ただしくなった。警務部を中心に出廷する3人に「どのような答弁をさせるか」で対策を練り、退職後も適用される地方公務員法の「守秘義務」を盾に「答えられない」を連発。不正の有無については「適正に執行した」と答える方針を立てた。
証言の持つ意味は大きい。「捜査費はでたらめ」と真実を語れば、地検は告発を受けた詐欺罪などで立件を検討するかもしれない。加えて、証人尋問は裁判長に対し「真実を述べます」と宣誓した上で行われる。うその証言をすれば、偽証罪に問われる可能性がある。自業自得とはいえ県警も追い込まれていた。
同僚の証言前、ある捜査員が法廷での展開の見通しを取材班に語った。
「(真実を)言うわけがない。偽証罪は立証が難しい。地検が偽証罪をやる気があるなら、とっくに告発分の詐欺罪をやっている。幹部も『偽証罪を立件させなければいい』と言っていた」
苦しいのは証言台に立つ捜査員だ。自分には一円も渡っていないのに上司の命令で偽造書類を書かされた揚げ句、地検での事情聴取。さらには裁判所での証人尋問。そのたびに組織への忠誠心を試され、うそをつき続ける。心中はいかばかりだったか。 ■「私らの責任」
証人尋問の当日、オンブズマン側の代理人、清水勉弁護士=東京弁護士会所属=が次々と質問を浴びせた。3人の証人とも想定通り「職務上の秘密」「捜査費は適正執行」を連発した。
ただ、捜査費問題について「捜査員から事情を聴いたのか」という質問に、元総括補佐は「課員全員から聴いた」としたのに対し、2人の捜査員ははっきりと「聴かれていない」と答えるなど食い違いも見せた。
さらに、捜査費問題に関する高知地検のずさんな捜査の内幕を詳細に報じた16年3月10日付の本紙朝刊を「読んだか」という質問に対する答えが印象的だった。
当時、県警内は大騒ぎになったにもかからわず、捜査員は「読んだと思うが、はっきり覚えていない」。OB捜査員も「たぶん見たんじゃないかと…」とよそよそしく話した。あまりにも不自然だった。
後日、署長や県警本部の所属長を歴任したあるOBはこう語った。
「後輩たちに法廷でうそをつかせ、本当に申し訳ない。捜査費の不正を改めてこなかった私らの責任だ」
【写真説明】現職捜査員らが証言した法廷(高知地裁)
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