【14】不正の連鎖 再生へどう踏み出す
(2005年3月30日・朝刊)
県警の捜査費不正の報道を始めて数日後、取材班に電話があった。
「まだ幹部が(偽造書類を作れと)言ってくる。この組織はどうなっているのか」
県警は「捜査費は適正に執行している」と否定しながら、なお裏金づくりを続けていた。憤慨とやりきれなさが入り交じった捜査員の電話の声は、捜査費問題の根深さを訴えていた。
捜査費不正について多くの現職、OBが「かなり前からやっていた」と話した。犯罪を摘発する側の警察組織になぜ不正がまん延したのか。 ■共犯の呪縛
上位階級の幹部が部下に書類偽造を指示する。部下は組織への忠誠を迫られ不正に加担し、“共犯者”になる。そして自らが幹部になれば、今度は恩恵を受ける側として同じ不正を繰り返す。協力しなければ「不満分子」として排除され、出世の道は断たれる――。
ある現職捜査員は「(不正に)かかわっていない人間を捜す方が難しい」と漏らす。書類偽造が、犯罪行為であることを自覚しない警察官はいないだろう。
しかし、不正に一度手を染めた警察官は“共犯の呪縛(じゅばく)”でがんじがらめになり、不正の連鎖は脈々と受け継がれてきた。その背景には、絶対的な階級制度で組織を統率する警察の特殊性がある。
加えて捜査費には「捜査上の秘密」という聖域があった。県警はこれを盾に疑惑を完全否定し続けている。いとも簡単に追及をかわせるからだ。公金をチェックする監査委員や会計検査院も、決して踏み込めない領域だった。 ■組織のほころび
警察の中に病巣の根を張った捜査費不正。だが、県警にはこれまで幾度か不正の連鎖を断つチャンスがあった。
行政機関の公金不正が批判されて久しい。県でも平成5年にカラ出張が発覚後、官官接待などが次々表面化。県は組織的慣行だったことを認め、適正化に乗り出した。
それを当時、県庁内に間借りし目の当たりにしながら、県警は改めなかった。「自分たちは特別な仕事をしている」という特権的な意識、「絶対に表に出ない」というおごりがあったとしか言いようがない。
しかし今、その不正隠しの聖域が崩れ始めている。北海道警などは不正を認め、少なくとも襟を正そうとしている。一方で県警はまたチャンスを逃そうとしている。
ある県警幹部は取材班にこう言った。「不正を認めれば、地検が捜査している詐欺と、裁判所での警察官の偽証を認めることになる。それは絶対にできない」
仮に県警が内密に捜査費不正を改めたとしても、これまでの過ちを認めない限り、県民の不信は払しょくできない。病巣を隠したままでは、再発の恐れもぬぐえない。
現在の警察組織が発足して半世紀を過ぎた今、犯罪は増え続け、捜査力の低下が叫ばれる。県警にもかつてないほころびが見える。部外に語ることを禁じた不満を現場の警察官たちが訴え始めたことに、幹部たちは向き合わなければならない。
県警は再生の一歩をどう踏み出すのか。背負った課題はあまりに大きい。
【写真説明】県警本部庁舎。県警は捜査費問題にどう向き合い、再出発するのか(高知市丸ノ内2丁目)
捜査費問題取材班
社会部・竹内 誠
大山哲也
海路佳孝
=おわり
この連載や捜査費問題についてご意見をお寄せください。〒7808572高知本町局私書箱40号、高知新聞社会部「捜査費問題」取材班。ファクス088・873・8119。Eメールkeisatsu@kochinews.co.jp
|