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5.がんじがらめだ(2006年3月1日・朝刊)
「全然話が違うじゃないか!」 監査対象の3分の1を超える1791万円余りの捜査費支出を「違法」などと認定した特別監査結果が出た22日、県警幹部らは騒然となった。 予測は完全に外れた。 「書類の日付や記載の不備を突かれるくらいで、問題を指摘されるのは百数十万円程度だろう」 監査に対する窓口だった警務・総務部門はそう楽観し、内部の問い合わせにも、「大丈夫、乗り切れる」と自信を見せていた。 県警は監査で聞き取り調査された捜査員に、質問や答えを文書で報告させていた。しかし、不正を告発した捜査員が証言内容をそのまま書くはずもない。 幹部の一人は言った。 「考えが甘過ぎた」 【写真説明】県監査委員2人=左側=と向き合う鈴木基久・県警本部長=右手前=と鈴木朝夫・県公安委員長。県警は内部調査でどういう答えを出すのか(24日、県庁北庁舎内の県監査委員室) ■ ■ 警察による組織的な裏金づくりの構図はこうだ。 各部署の次長クラスが捜査員に架空の領収書や支出書類を書かせ、書類上は支出したことにして裏金をプールする。それを部課長や署長が私的に流用する。部内の宴会にも使う。使途は幹部にしか分からない。 今回の監査対象は県警本部と高知署だけだった。「(聞き取り対象の)捜査員は限られる。誰も(不正を)しゃべれないだろう」。幹部だけでなく、現場捜査員の中にもそう確信する声があった。 警察はピラミッド状の強固な階級社会だ。現場警察官たちの忠誠心が組織を支えており、それが「捜査員はしゃべらない」根拠でもあった。だが、一部の捜査員は不正を明確に認めた。「上司の指示のままうそを書いた」。うっせきした組織への不満をぶちまけるように告白したのだ。 「これほどとは…」 監査報告書に目を通した幹部たちは絶句した。監査結果は「捜査上の秘密」の牙城を崩し、組織の統率力の破たんさえ明らかにしていた。 動揺する幹部たち。その一方で、ある捜査員は語気を荒らげた。 「不正がマスコミに漏れた時点で、幹部は組織の問題ととらえて対応するべきだった。現場にたまった不満を理解せず、なおざりにしてきた果ての当然の結果だ」 ■ ■ 特別監査で不正の存在を暴かれた後、県警は内部調査する方針を表明した。 捜査員が告発した組織的な裏金づくりや幹部の関与を自らの手で解明しなければならない。しかし、それを認めることは不正を否定し続けてきたこれまでの「うそ」を自ら証明することになる。 橋本大二郎知事は捜査費資料の全面開示による“再精査”や不正支出の返還請求の可能性に言及した。捜査費問題を追及している市民グループも有力証拠として特別監査結果を文書開示訴訟の控訴審に提出し、さらに新たな監査請求も準備している。 「がんじがらめだ。不正を認めても、否認し通しても、組織も個人も深い傷を負う。でも、ここで判断を誤ったら、県警は地に落ちる」 複数の幹部や捜査員、OBが苦渋の胸の内を明かす。 果たして県警はどう答えを出すのだろうか。 県民が見ている。 社会部=岡村啓太郎
=おわり
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