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3.しっかりやってこい(2006年2月27日・朝刊)
監査委員が指定した場所に出向く前、ある捜査員は県警幹部に呼ばれ、自分の名で支出したことになっている書類のコピーを見せられた。 幹部は言った。 「捜査協力者との接触場所とか細かいことを聞かれる。喫茶店のテーブルの位置などをよく考えて話すように」 身に覚えのない、実体のない支出。それを事実だと言い張れ、と命じたわけだ。 「しっかりやってこい」 幹部はそう言って捜査員の背中を押した。その声が、捜査員には「うそをついてこい」と聞こえた。 聞き取り調査から戻ると、今度は「これを書いてくれ」と幹部から紙を渡された。監査委員に聞かれた内容や質問にどう答えたかを書き込むようになっていた。 不正隠し。県警幹部の姿勢は、捜査費問題が表面化してから一貫している。 【写真説明】捜査費問題で揺れる県警。幹部が不正隠しを命じる一方、捜査員たちは監査委員に重い口を開いた(高知市丸ノ内2丁目) ■ ■ 捜査費問題が表面化したのは平成15年の7月。しかし実はその数年前にも取材に入ったことがある。その取材は結局、行き詰まった。情報を寄せてくれた当の捜査員が口を開かなくなったからだ。 捜査員はこう言った。 「これ以上協力するのはちょっと…。組織の報復があるから」 そのころ県警幹部は、取材班にこう言い放った。 「どんなに取材しても暴けんぞ。勝ち目はないき、やめとけ」 多くの場合、上司が部下に偽造書類の作成を指示することから捜査費不正は始まる。拒否すれば組織内で「不満分子」のレッテルを張られ、昇進や出世の道は閉ざされる。いや応なく、捜査員は従わざるを得ない。 従ったが最後、不正に手を染めたことになる。つまり上司との“共犯”関係。共犯関係で結びついた組織の規律は一見すると強い。だからだろう、県警幹部は末端捜査員の管理に自信を持っていた。 ところが…。 ■ ■ 警察という組織で上下関係をたたき込まれた捜査員たちが、聞き取り調査で一人、また一人と組織の不正を語っていった。 口を開かせたのは、監査委員の姿勢だった。監査委員は「(不正を証言した)捜査員を守る」というスタンスを貫いた。誰が口を開いたか、そもそも口を開いた人間がいたかどうかさえ、徹底して分からないようにした。 「大丈夫。誰も、うとうて(不正を証言して)ない」 特別監査報告の直前まで、県警本部では幹部の楽観視した声が響いていた。 ■ ■ 22日、特別監査報告は県警捜査費の支出の一部を「違法・不当」と断じた。県警幹部の動揺ぶりは明らかだった。末端捜査員が不正の実態を話すなんて、考えられないことだったからだ。 その2日後、県警は鈴木基久本部長をトップとする「予算執行調査班」を設置し、「内部調査の結果を基に不正支出の有無を判断する」方針を強調した。 同じ日、県公安委員会の鈴木朝夫委員長が、その意味を別の言葉にして語った。 「(監査結果を)事実とは受け止めていない」
(捜査費問題取材班) ご意見、情報をお寄せください。〒7808572高知本町局私書箱40号、高知新聞「捜査費問題」取材班。ファクス088・873・8119。Eメールkeisatsu@kochinews.co.jp
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