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2.全部、うそだから(2006年2月26日・朝刊)
形式的なあいさつを終えると、捜査員は封筒から資料の束を取り出し、バサッと机に投げた。 「これ、全部うそだから」 資料は、捜査協力者らに捜査費を支払ったことを示す証拠書類のコピー。県警本部を出る際、会計課が彼に持たせたものだった。 監査担当者は書類に記された支出を一件一件確認していく。捜査員は身を乗り出すと、書面にささっと指をさした。 「あっ、これはほんとに使った。でも、これはうそ、これもうそ…」 淡々と不正を認めた。 ■ ■ 聞き取り調査を始めたのは昨年の11月末だった。対象は平成12―16年度に捜査費を執行した県警本部と高知署の捜査員302人。県庁北庁舎の会議室などに呼び、1対1で向き合った。 それまでの実地監査(書類審査)と店舗調査で、捜査費が書類上の支払先に渡ったとは思えない不自然な形跡が次々と見つかった。しかし、それを不正と認定するには、捜査員の生の証言がどうしても必要だった。 「そんなに疑うなら、自分で調べてこいっ」。協力者から領収書を得たときの詳細な状況を聞く監査委員に、怒声を浴びせた捜査員も少なくなかった。 彼らはいら立たしげにこう言った。「上のことは知らん。でもおれたちはちゃんとしゆう」「事件を解決しゆうのは幹部じゃない。現場のおれたちやき」 「おれは捜査費は使わん。全部自腹」と語気を強める捜査員もいた。感情をあらわにする彼らに、監査委員は「現場の誇り」を強く感じた。 嵐護・県監査委員事務局長は、捜査員にこんな話を披露した。県庁にも人知れず毎月何万円も自腹を切る職員がいること。過去にカラ出張や官官接待で批判を浴び、その清算に苦しんだこと・・・。 「僕ら団塊の世代はあと数年で県庁を去る。でも、県警の将来を担うのはあなたたちだ。いい県警にしよう。僕は退職しても、あなたを見よるきね」。いかつい捜査員の目が潤んだように見えた。感極まった表情で「頑張ってください」と監査委員を激励する捜査員もいた。「上司の指示で領収書を偽造した」「使い道は上しか知らない」。ぽつぽつと証言が集まった。 ■ ■ 公表された監査報告書には、現場の告発がずらりと並んだ。監査委員は支出の一部を「実体がなく違法」と断じた。 「確かに書類は整っていた。でもそれは、うそだ」。嵐事務局長の口調は確信に満ちていた。 監査委員は、県警幹部からも話を聞いた。判で押したように同じ答えだった。「捜査費は適正に執行している」「書類はきちんとそろっている」。そしてこう付け加えた。「部下を信頼している」 発言を伝え聞いた捜査員は吐き捨てるように言った。 「偽造を命じておいて『信頼』? まさか上は、責任を現場に押し付けるつもりなのか」 【写真説明】「一部違法」の監査報告を受け、報道陣に囲まれる鈴木基久県警本部長(中央)=22日午前、県議会 (捜査費問題取材班) ご意見、情報をお寄せください。〒7808572高知本町局私書箱40号、高知新聞「捜査費問題」取材班。ファクス088・873・8119。Eメールkeisatsu@kochinews.co.jp
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