【上】組織の重圧の中 覚悟問われる捜査員
(2005年11月25日・朝刊)
橋本大二郎知事と県議会の双方が7月に請求した県警捜査費の特別監査が、ヤマ場を迎えた。書類審査などを終えた県監査委員は近く、捜査費支出にかかわった捜査員への聞き取り調査に入る。調査の対象は現職を中心に319人。どんな「真実」が出るのか、書類上の「捜査協力者」は実在するのか―。
特別監査がターゲットにしているのは、架空の「捜査協力者」を使った裏金づくりだ。架空の人名で架空の出費をつくり、公金を請求して裏金化する。れっきとした公文書偽造と言っていい。
さまざまな書類や証言によって多くの人がこの疑惑を感じている。そして県警は真っ向からそのことを否定している。
市民を取り締まるべき警察が自ら公文書を偽造して公金を不正使用する。それを指摘されても認めない――仮にそんなことが事実であれば、世の中の道理は何も通用しなくなる。
知事と県議会が特別監査を決めたのは、そこにメスを入れるためだ。
特別監査に当たり、聞き取り調査は最も重視されていた。警察の裏金は領収書や精算書が完全に整えられ、文書からの追及は不可能に近い。必然的に、個別の聞き取り調査が疑惑解明の鍵を握ることになる。
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特別監査の対象は、県警本部と高知署の平成12―16年度(16年度は監査委員の自主監査)の県費捜査費。5年間の執行総額は約1万3000件・5100万円に上る。
県監査委員が捜査費関連文書の審査を始めたのは8月下旬。「捜査上の支障」を盾に、県警は抵抗姿勢を見せた。
捜査費を渡したとする延べ1万398人の捜査協力者のうち、21・6%・2243人を県警は開示せず、「協力者」と接触したとする飲食店などの領収書も「協力者保護に支障がある」として一部の開示を拒否。
監査委員はこうした県警の態度を「監査妨害、監査忌避に当たる」と厳しく批判。3度にわたり全面開示を文書で求めたが、県警の非開示姿勢は変わっていない。
そうした県警の抵抗を受けながらも、監査委員は書面審査によって捜査費支出の極端に不自然な変動を調べ上げた。
平成12―16年度の五年間で捜査協力者に支払ったとする謝礼金は、約1769万円から約45万円に、実に97%も減少していた。これは情報公開の進展や、本県など各地で捜査費不正が表面化した時期と一致する。
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約4億円の不正支出を認定した北海道警の特別監査では、約1万2000人に及ぶ聞き取り調査で、捜査員が「執行の事実はない」と認めたことが決定打となった。
道警捜査員が真実を話した背景には、道警が一部警察署の不正を認め、元道警幹部が実名で裏金づくりの実態を告発したことがあった。
しかし、高知県警の場合は一貫して不正を否定し続けている。そうした組織の重圧の中で、個々の捜査員がどこまで本音を話せるのか―。聞き取り調査を前に、現職やOBの心境は複雑だ。
ある捜査員は「上司の指示通りに文書を書いてきた。だが、それを話せば自分が特定される」と不安を話す。しかし別の捜査員は「現場は確かに動揺している。でも、怒ってもいる」と明かす。
捜査員の覚悟が試されている。
【写真説明】県警本部に書類審査に入る県監査委員と事務局職員(8月26日)
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