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2006年12月4日掲載
◆【3】 金で協力得ていない
元警察幹部 原田 宏二氏高知県をはじめ、北海道や愛媛県など各地で噴出した捜査費問題。警察がひた隠しにしてきた裏金システムが暴かれたのは、警察官自身の証言が大きい。北海道警の釧路方面本部長(警視長)まで務め、16年2月に裏金づくりを実名告発した原田宏二さん(68)に警察組織から見た捜査費問題を聞いた。 【写真説明】「在職中、協力者に現金を渡したことは一度もない」と話す原田宏二さん(札幌市内) ▼関係はすべて自腹北海道警の刑事は協力者を「畑」と呼んだ。畑はまめに土を耕したり、肥料を入れないと作物ができない。だから普段から足しげく通い、一緒に酒を飲んだり、盆暮れや誕生日にちょっとした物を渡した。「畑」との関係は全部自腹。私は刑事の経験が最も長かったが、協力者に現金を渡したことは一度もない。 会計担当者や庶務係が毎月のように、うその協力者名などが下書きされた書類を持ってきた。当時はそれを基に当たり前のように会計文書を作っていた。幹部になってからは、こうして作られた裏金を闇手当として受け取ったり、部下との飲み食いに使った。 正直に言うと、在職中は裏金のことを深く考えたことはない。会計検査院の検査や監査があるたび、必死でうその説明をしていたのが実態だ。 (高知県警は平成12―16年度に約3億4000万円の捜査費を執行した) この金額から計算すれば、警察のいう「存在が明らかになれば命や名誉が失われる」協力者はすごい数になる。そもそも、警察が捜査費を支払っているという「協力者」とはどんな人たちなのか。 交通事故の目撃者も協力者なら、犯罪被害者は事件の最大の協力者ではないか。被害者から話を聞き、捜査するのは警察の仕事。被害者は被害届を出したり、実況見分に立ち会うなど長い時間を取られる。 こういう人に捜査費を払うかどうかは全く議論していない。積算根拠もないまま予算が組まれ、長年執行され、協力者がいないと治安が維持できないようなイメージが出来上がっている。あいまいな運用だから、当然のように裏金になる。 ▼混乱する現場(高知県警は9月の内部調査結果で裏金の存在を否定した) 北海道もそうだし、高知でも愛媛でも、警察の裏金問題の対応は統一されている。最初は完全否定し、監査委員が出てきたり、内部調査を迫られたら私的流用や上層部の関与は否定し、早期に返還して幕引きを図る。県警や道警だけの判断ではこうはならない。警察庁が調整している。 日本には金で捜査に協力する文化はない。なのに、警察は裏金問題が発覚してから「とにかく捜査費を使え。執行率を上げろ」と指示するので、現場は使い方が分からず混乱している。これまで謝礼を渡したことのなかった質屋や古物商にまで渡している。 ある自治体でマンションに泥棒が入ったとき、刑事が「防犯ビデオを貸してほしい」と菓子折りを持って来たという。管理人の方が「こんな物、もらったことがない」と驚いたほどだ。 ▼制度の再構築を刑事にとって「畑」は財産。誰が協力者なのかは上司にも同僚にも話さない。仮に会計文書に協力者のことを書けと言われれば、捜査費を使おうとしないだろう。いちいち上司の決裁のいる現行のシステムでは現場は自由に使えない。 協力者との接触費用を手当としてあらかじめ捜査員に渡すことを考えてはどうか。その代わり、上司は事後的に何に捜査費を使ったかを報告させ、協力者からの情報と事件検挙の実績がリンクしているかきちんとチェックする。実績の上がらない刑事は適格性がないと判断すべきだ。 現場の仕事の実態に見合うように制度を構築しない限りこの問題は解決しない。ほとぼりが冷めたら、また裏金づくりを繰り返すだけだ。 はらだ・こうじ 昭和12年札幌市生まれ。32年に北海道警に採用。旭川中央署長、防犯部長を歴任し、平成7年に釧路方面本部長で退職。16年10月、警察の組織改革を目指す「明るい警察を実現する全国ネットワーク」を設立し代表に。著書に「警察内部告発者」「警察VS警察官」(いずれも講談社)。
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