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2006年12月2日掲載
◆【1】 明らかに内部文書 平成15年春。疑惑の端緒は、「捜査費執行状況等一覧表」と記された数枚の文書だった。
「中国人グループ等による窃盗事件」「数県に及ぶ広域金庫破り」「暴力団員らによる組織的自動車盗」―。事件名とともに、実在する捜査員名がずらり並んでいる。 一覧表は、県警本部捜査一課が14年4―10月の間に、高知、南国両市内の27人の「捜査協力者」に捜査費を渡したことを示していた。 捜査費を渡したとする交付場所も実在の店舗や公園ばかり。しかし「債主」欄に記された協力者名の同姓同名の人物は、本紙の取材にいずれも捜査費の受け取りを完全に否定した。あるいは、電話帳に名前は残っていても既に他界していた。 「協力者はうそ。上司の指示で電話帳から勝手に拾った。捜査費は幹部の飲み食いなどに使われている」 複数の捜査員が本紙に明かした。 【写真説明】県警が開示した一部黒塗りの捜査費公文書(左)と一覧表(捜査員名と印影は本紙が黒塗り)。支出日、金額とも一致する ▼つながった線捜査費問題は県警が架空の協力者を仕立てて謝礼を渡したように文書を偽造し、捜査費を裏金に回していた疑惑だ。元は税金でも、いったん裏金にすれば警察の一部幹部が自由に使える。 協力者は捜査機関にとって最も機微に触れる存在。会計検査院からも、監査委員からも、捜査費がまともに調べられたことはなかった。文書開示請求には「捜査上の秘密」「協力者の保護」を主張すれば、すべて黒塗りで押し通せた。 しかし、こうした県警の論理は徐々に崩れつつある。と同時に、疑惑は一層深まっている。 捜査費公文書の開示を求める市民オンブズマン高知の訴訟で、高松高裁は今年9月、「高知県警で広く組織的不正経理の疑惑が存在した」と指摘。県警に捜査一課など3部署の公文書の一部開示を命じた。 高裁判決の背景にあったのは、県監査委員が2月に公表した捜査費の特別監査結果だった。高裁は特別監査結果を全面的に採用した。特別監査では複数の捜査員が監査委員に裏金づくりを告白、監査結果は執行の一部を「支出の実体がなく違法」と断じていた。 高裁判決に沿って、県警は11月に一部公文書を開示する。開示された公文書と疑惑の端緒となった「一覧表」は、「協力者」に払ったとする捜査費の交付額や交付日、その回数に至るまで一致していた。 県警がこれまで「出所不明の文書」としてきた一覧表が県警の内部文書であることは、誰の目から見ても明らかだった。 「恐れていた事態を迎えた」―。県警幹部のうめきは、ほかならぬ県警自身が保管する公文書によって、これまでの疑惑が1本の線でつながったことを示している。 ▼「判断ミスだ」公文書を開示する直前には、オンブズマンが行った県警幹部に対する捜査費の詐欺容疑の告発で、高知検察審査会が高知地検に再捜査を求める「不起訴不当」を議決した。 決め手はやはり「一覧表」だった。有権者名簿から選ばれた一般市民で構成する検察審査会は、これを「内部文書との疑いが払しょくできない」と判断し、作成経緯の捜査を同地検に促した。 9月に「私的流用やプール金(裏金)はなかった」とする内部調査結果を公表した県警は、国費分などの調査結果を県議会12月定例会で報告する。県監査委員、裁判所、検察審査会と多くの公的機関が疑惑を指摘する中、公文書と一覧表の一致など数々の問いに答えなければならない。 「疑惑を否定し続けたのは、完全に組織の判断ミスだ。かといって、いまさら不正を認められない」。県警幹部の、吐き捨てるような言葉だ。 ■ □ 捜査費不正の疑惑が深まる中、警察組織などに詳しい3人のインタビューと特集でこの問題をあらためて考える。 捜査費 協力者との接触費や現金謝礼、重要事件の解決時に警察内部で開く激励慰労会などに使われる。県費と国費があり、県警は平成12―16年度に国費2億3733万円、県費1億350万円を執行した。裏金問題の発覚後は、予算額、執行率とも激減。警察本部と高知署が16年度に執行した現金謝礼(県費)は45万円で、12年度から97・4パーセントも減少した。 社会部・大山哲也
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