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組織的不正強く推認 県警捜査費訴訟の判決要旨(2005年5月28日・朝刊)
県警の捜査費関連公文書の非開示処分取り消し請求訴訟で27日、高知地裁が言い渡した判決の要旨は次の通り。
(1)県情報公開条例6条2項の解釈について(1)本件条例は、地方自治の本旨に基づく県民の知る権利にのっとり、公文書の開示に関し必要な事項を定めるとともに情報提供の充実を図ることにより、県民の県政に対する理解と信頼を深め、もって県民参加による公正で開かれた県政を一層推進することを目的としており(1条)、6条2項は、同条1項所定の非開示情報に類型的に該当する情報であっても、「当該公文書の開示をしないことにより保護される利益に明らかに優越する公益上の理由があると認められるとき」は、なお開示される場合があり得ることを規定している。そして、本件(情報公開事務)手引においては、6条2項の趣旨は、「非開示情報であっても、開示することに優越的な公益があると認められる場合には、開示することを定めたもの」であって、解釈および運用について、「非開示情報であっても、個別具体的な事例において、優越的な公益が認められる場合は、実施機関の判断により開示することを可能とする規定を設けたもの」であり、「公益性の判断に当たっては、この条の第1項第2号から第7号の規定により保護される利益の性質および内容を考慮し、これを不当に侵害することがないように」、特に、「個人の人格的な利益その他憲法上保障されている権利利益については慎重に判断することが必要」である旨記載された上、適用例として、「条例の目的を達成する上で当該情報の開示が不可欠であると認められる場合」が掲げられている。 (2)本件条例の文言上、「開示することができる」という表現が用いられておらず、「―開示するものとする」と規定されていることに照らせば、非開示情報を開示することに明らかに優越的な公益があると認められる場合についてまで、当該非開示情報を開示するか否かの裁量権を実施機関に許容したものであるとは解し難い。むしろ、前記(1)のとおり、本件条例が、地方自治の本旨に基づく県民の知る権利を背景として、情報提供の充実を図ることを目的としていることからすれば、6条2項は、非開示とすることによって保護される利益よりも、開示することによって得られる公益が明らかに優越する場合には、実施機関に当該情報を開示すべき義務を定めたものと解するべきである。
(2)県警本部における組織的不正経理の存否について(1)仮に、原告らの主張の通り、本件非開示文書が、組織的不正経理の一環として作成された、虚偽公文書ないし偽造文書であり、そこに記載されている情報が全て実態のない虚構であることが判明したとなれば、6条2項の適用を問題とするまでもなく、公共安全情報に該当するとの被告の判断の相当性が否定され、実質的には非開示とすべき利益が失われているともいえ、他方、これらの文書の存在および内容を明らかにすることによって、組織的不正経理の全容解明に資するものといえるから、当該公文書の開示をしないことにより保護される利益に明らかに優越する公益上の理由があると認められることになる。また、高知新聞は、少なくとも県警本部捜査一課において組織的に不正経理が行われている旨報道しているが、その報道内容の取材源は必ずしも明らかではなく、その真実性を裏付ける証拠もない以上、これらの報道から、直ちに捜査一課における組織的不正経理を認めることは相当でない。 原告らは、「捜査費執行状況等一覧表」は捜査員名の記載以外は、すべて虚偽の会計書類に基づく実態のないものである旨主張するが、14年度当時の捜査一課総括補佐は、そのような一覧表は作成していなかった旨を供述するなど、一覧表の作成者は、証拠上不明であるというほかない。従って、その形式的証拠力が認められない以上、一覧表を根拠として、県警本部において捜査費の執行に関し、組織的に不正経理が行われているとも認められない。
(3)組織的不正経理に対する疑惑の有無とその程度について(1)県警本部で組織的に不正経理が行われているとは証拠上認められないとはいえ、捜査費の執行に関し、それが違法、不当な目的のために流用されているのではないかなどといった疑惑があり、それに相応の根拠が伴っている場合は、情報公開制度を利用して捜査費の執行状況を事後的に検証し、当該疑惑の解明を図り、警察会計の透明化を促進することに、充分な公益上の理由があるものというべきだ。疑惑の濃淡および当該情報を非開示することにより保護される利益の大小に応じ、その公益が、当該情報を非開示とすることにより得られる利益に明らかに優越すると認められるのであれば、6条2項により、被告が当該情報の開示を義務づけられる場合があるというべきである。(2)そこで検討するに、本件一覧表は、その形式的証拠力が認められず、また、本件全証拠によっても、一覧表が平成14年4月4日から同年10月28日までの捜査一課の捜査費執行状況に合致しているとも認めるに足りないが、本件一覧表の記載内容には、14年当時、捜査一課に所属していた捜査員9名の氏名と同一の氏名が「捜査員名」欄に記載されているなど、事実に合致することが確認できる記載が含まれている。その上、「債主」といった必ずしも警察内部においてのみ使用されているものではないにしても、一般になじみがないと解される用語が用いられていることなどからすると、一覧表の記載内容が捜査一課の捜査費執行状況に合致しているのではないかとの疑いを必ずしも払拭(ふっしょく)できない。そして、高知新聞の報道が一覧表の記載を基にし、捜査一課の捜査費の執行に係る不正経理が存在する旨を指摘。さらに、一覧表の中で捜査費を受領したと述べている者がいないことが認められることなどを考慮すると、一覧表の記載内容が捜査一課の捜査費の執行状況に合致しているとすれば、その捜査費の執行内容は虚偽であり、捜査一課の組織的不正経理が強く推認されることになる。一覧表の記載内容が捜査一課における捜査費の執行状況に合致しているのではないかとの疑いがあるということは、そのまま捜査一課に組織的不正経理が存在するのではないかとの疑いがあることにほかならない。 (3)また、平成15年7月23日および同月24日の(高知新聞の)報道により、捜査一課の捜査費の組織的不正経理に関する疑惑が、多数の県民に認識された。この疑惑は、虚偽公文書作成罪や有印文書偽造罪、公金の詐取罪といった刑法犯を構成する蓋然(がいぜん)性が高い事項を対象とするものである。当時、会計経理に深く関与する立場にあった14年度の捜査一課の総括補佐は、報道後に、捜査費が適正に執行されていることを確認した旨供述するが、その具体的方法は明らかでなく、当時捜査一課の捜査員2人はいずれも、格別の調査を受けたことはない旨供述している。これら供述を総合すると、県警が報道後、仮に内部調査を行っていたとしても、虚偽公文書作成などの犯罪にかかわる疑惑を前提として、その解明を図るため関係者に詳細な聞き取りなどの内部調査を行ったとまでは認められない。 そして、(高知新聞の)報道は、一見して、実在する捜査員で、一覧表に記載された捜査員を取材源としたと解される記述となっている。その上、捜査員がいわば内容が虚偽で、実体を伴わない会計書類を作成して行使している▽それが組織的に、上司の指示に基づいて行われている▽高知地検の取り調べに先立ち、総括補佐から口止めされた―などといった、組織的な不正経理や組織的にその発覚を防ぐ措置が講じられていることなどを暴露するといった内容が、相当に具体的に盛り込まれている。これを目にした多数の県民にとって、捜査一課の捜査費の組織的不正経理に関する疑惑が、より強まったものと容易に推認される。 また、(捜査員の証言に基づく)報道に先立って、15年8月に被告ら県警本部の幹部は、県議会総務委員会で捜査費が適正に執行されている▽一覧表の内容と実際の会計書類はそごがある―と答弁したばかりか、監査委員にも捜査費が適正に執行されている旨の答弁を行った。しかし、一覧表に捜査員として記載されている捜査員複数が、報道の内容通りに高知新聞の記者に供述したということになれば、被告ら県警幹部の説明と真っ向から矛盾する見解が、県警本部内部から報道機関に提出されたことにほかならない。いずれの説明内容が真実であるかにかかわらず、双方の説明にそごをきたしているということ自体、由々しき問題である。 そして、弁論の全趣旨によれば、高知新聞は、高知県下において広く購読されている普通紙であり、そこで報道された内容が県民に与える影響は大きいというべきであり、県警としてもその報道をたやすく看過しうる事態ではないといわざるを得ない。 しかも、仮にその報道内容が真実であれば、単に警察官としての倫理違背が甚だしいというのにとどまらず、捜査費の国費、県費を詐取しているという点において、虚偽公文書作成罪や有印私文書偽造罪、公金の詐取罪といった刑法犯を構成する蓋然性が高く、報道は見方によっては、捜査の端緒にも充分なり得るものである。 仮に報道内容が虚偽だとすれば、高知新聞の記者が実在しない捜査員から聞いた旨の記事を捏造(ねつぞう)したか、実在する捜査員が虚偽情報を新聞記者に提供したということになる。それによって、県警の名誉や威信を不当に侵害し、警察組織全体の士気にも由々しき影響を及ぼしたものと考えられ、警察職員の職務倫理および服務に関する規制に違背するものに他ならない。これらを考慮しても、(高知新聞の)報道は県警にとってたやすく無視したり、黙殺することを相当とする内容のものとは考え難い。 しかし、県警は高知新聞に情報を提供したとされる、捜査員が誰なのかを全く調査をしていないなど、その対応は不自然といわざるを得ない。 なお、被告は、高知新聞に対し格別の対応をしていないことの理由として、最も公である県議会で説明済みであるとも主張するが、報道はその県議会での説明後に、捜査員複数がその説明内容と矛盾する説明をしたことを内容とする。県議会で説明済みであるからとの被告の主張は、合理的な説明となっていない上、県議会での説明自体、その内容は概括的、抽象的な内容に終始し、報道された疑惑について、どのような調査を講じたかといったことすら明らかにしておらず、説明責任が完遂されたとも、疑惑が払拭されたともいい難い。 そうすると、県警の報道に対する対応が、不自然であるといわざるを得ず、そのような対応を取ることについて合理的理由も認められない以上、報道が指摘する14年度における捜査一課の捜査費の組織的不正経理に関する疑惑が真実であるからではないかとの疑惑は、相当程度強いものといわざるを得ない。 (4)以上のような疑惑に対し、被告は、監査結果や検査結果で組織的不正経理をうかがわせるような格別の問題点の指摘はされておらず、特に、会計検査院側が選定した捜査一課の捜査員3名を対象とする聞き取り調査など厳格な検査が行われたことから、捜査費の執行がすべて適正に行われたことが明らかである旨主張する。 しかし、監査委員の監査に対しては、捜査に支障を来す恐れなどを理由に領収書などの関係書類は提出されていない。会計検査院の検査でも会計実地検査を行う調査官が、捜査上の秘密を理由に情報の提供を拒絶されたり、領収書の名義人本人に対する事情聴取を控えざるを得ないといった場合があるなど、捜査上の秘密などによる制約が相当に大きく、監査委員の監査や会計検査院の検査にも限界がある。これらに対して、必ずしも万全の信頼を置き難いといわざるを得ない。 従って、監査および検査結果で、県警本部の会計処理に組織的不正経理をうかがわせるような格別の問題点の指摘がなされていないとの事実により、疑惑が払拭され、捜査費がすべて適正に執行されていると積極的に認めるには足りない。 また、被告ほか県警本部の幹部による県議会での、捜査一課の組織的不正経理に関する疑惑に対する答弁が、概括的、抽象的であることから、それによって、疑惑が払拭したとも認められない。 (5)そうすると、平成14年度における捜査一課の組織的不正経理に関する疑惑は相当に具体的であり、これを解明することは相当に高度の公益性があるというべきである。
(4)本件非開示処分に対する6条2項の適用について(1)そこで、公益性と、捜査一課の捜査費に係る文書で、2号ないし4号該当が認められるものについて、それを非開示とすることによって保護される利益との比較について検討する。ア まず、2号該当性が認められる捜査一課の捜査費に係る「捜査費支出伺」、「支払精算書」、「捜査費交付書兼支払精算書」、「支払伝票」およびこれらに添付された領収書などに記載された警部補以下の階級にある警察官の氏名及び印影、「支払精算書」および「支払伝票」に記載された捜査協力者などの実名に係る住所及び氏名並びに領収書に記載された捜査協力者などの実名に係る住所、氏名及び印影については、その非開示によって保護されるべき利益が、個人のプライバシーを中核とする個人情報の秘匿という、相当具体的な権利利益である。これに対し、捜査一課の捜査費の組織的不正経理に関する疑惑は、相当に具体的であるとはいえ、それが未だ疑惑の域にとどまっていることからすれば、この個人情報の秘匿という重要な利益の保護よりも、明らかに優越する公益があるとまでは認められない。 イ 次に、捜査一課の県費、国費の捜査費の月別の収支を明らかにする文書は、捜査の繁閑は明らかになるものではあるが、これによって、捜査協力者などの氏名や個別具体的な捜査の状況まで明らかになるわけではない。その情報量に照らし、捜査に影響を及ぼす恐れは抽象的で、仮にその恐れが顕在化したとしても、捜査に対して直ちに深刻な影響を与えるとまでは、容易には想定し難い。加えて、本件各開示請求時までの間に捜査費が執行されてから、数か月以上が経過していることなども考慮すると、平成14年度における捜査一課の捜査費の組織的不正経理に関する疑惑を解明するという公益性は、非開示とすることによって保護されるべき利益に明らかに優越するものと認められるというべきである。 ウ また、本件非開示情報のうち、「支払精算書」の金額などは、必ずしも個別具体的な捜査費の執行を直接明らかにする情報ではなく、この情報を非開示とすることによって回避しようとしている、公共の安全と秩序の維持に支障を生ずる恐れは、相当抽象的なものにとどまっている。加えて、本件各開示請求時までの間に、捜査費が執行されてから数か月以上が経過していることなども考慮すると、当該部分を開示することによって得られる公益性は、これらを非開示とすることによって保護される利益よりも明らかに優越するものと認められるというべきである。 (2)他方、捜査二課および暴力団対策課の各捜査費支払証拠書について検討するに、平成14年度における捜査一課の捜査費の組織的不正経理に関する疑惑があることを考慮すれば、広く警察組織における組織的不正経理に対する疑惑が存在していると指摘できるにしても、これらの疑惑は、捜査第一課に対する疑惑とは異なり、いまだ抽象的なものにとどまっている。捜査一課に対するのと同水準の疑惑が存在するものとはいえないから、捜査二課、暴力団対策課の各捜査費支払証拠書に係る本件非開示情報を、非開示とすることにより保護される利益に明らかに優越する公益上の理由があるとまでは認め難い。
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