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脅え (夕刊「話題」)
(2005年5月21日・夕刊)
「縛り首やな」
「一生飼い殺しだ」
「頭おかしいんじゃないか」
今年1月、愛媛県警の捜査費不正を実名告白した現職警察官に対して、高知県警の幹部から出た言葉だった。県警の捜査費問題が浮上してもう1年10カ月。県警の体質が何も変わっていないことをよく表している。
捜査費不正は絶対的な階級社会の中で、幹部が部下に不正を命じ、全員が共犯関係でがんじがらめになる特殊性がある。生殺与奪を幹部に握られた現場の警察官は、組織の腐敗に口をつぐむ。幹部は「不満を持つ人間はいない」と手前勝手に解釈し、口を開いた人間を「頭がおかしい」と切り捨てる。
取材して分かったのは、警察を一番恐れているのが、組織の内情を知る現職警察官でありOBだということ。「生活がある。取材は勘弁してくれ」と何度も言われたし、こちらの顔を見るなり逃げ出す幹部もいた。
「尾行には気をつけろ」「通話履歴が分からないよう携帯電話は複数持て」と真顔でアドバイスしてくれた人もいた。警察官にそう言われれば、やはり不安になる。車の運転中にバックミラーで後ろを見る癖がついたのも、捜査費取材を始めてからだった。
不正の解明に消極的だった橋本大二郎知事が先日、内部告発者と会う用意がある考えを示した。「従前と姿勢は変わらない」と言うが、県民世論を随分と気にしている節はある。
ただ、不正を知る当事者たちが警察という組織に抱く脅(おび)えは相当に強い。それをどこまで理解した上での態度表明なのか。理解が不十分では、知事の“呼び掛け”もただの政治パフォーマンスになりかねない。そうならないことを願っている。(竹内 誠)
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