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(2005年5月4日・朝刊)
常にある種の強迫観念にさいなまれる職業がある。事件記者もその一つだ。いざ重大事件が起きたら、他社に抜かれまいと特ダネ合戦に血道を上げる。
捜査情報は警察側が握っている。逮捕された容疑者に記者が直接取材することは事実上、不可能だ。日ごろから捜査幹部に食い込み、いかに情報を聞き出すかに腐心する。北海道新聞取材班編の「日本警察と裏金 底なしの腐敗」(講談社文庫)は、そんな彼らが警察の捜査費疑惑を真正面から追及した記録である。
本紙の記者は報道に踏み切るまでの葛藤(かっとう)を赤裸々に記している。「組織不正を暴けば、事件事故の情報が取れなくなる」。それは彼にとって恐怖だった。「県警と取引すれば、これから事件ネタは抜きっぱなしだ」。そんな悪魔のささやきが聞こえた時さえあったという。
そんな強迫観念を吹っ切らせたのは、「権力の不正は許さない」という記者の初心だった。現職警察官の実名告発を引き出した愛媛新聞取材班は、読者にこんなメッセージを発した。
「告発通り裏金づくりが長年あったとしたら、報道機関にも責任の一端があると考える。事件事故の情報を得たいがため警察寄りになり、足元の公権力への監視が抜けていたことになるからだ。自戒を込め取材姿勢の在り方を見直さねばならない」。
高知、愛媛、神戸、北海道の各新聞社の事件記者らが執筆したこの記録は、警察腐敗の追及であると同時に、報道機関と権力の関係はどうあるべきか、を問うている。
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