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高知県警捜査費問題

捜査費文書開示訴訟 最終準備書面(要旨)

(2005年1月22日・朝刊)

 21日、高知地裁で開かれた県警の捜査費文書開示訴訟の第7回口頭弁論で、原告の市民オンブズマン高知側と、被告の県警側が陳述したそれぞれの最終準備書面の要旨は次の通り。

 

▼オンブズマン側 捜査費文書 全部うそ

 第1 はじめに

 全国の警察で組織的な不正経理が行われていることは、今や疑う余地がない。警察の不正経理がまん延、固定化したのは警察組織に甘え切った国民の責任だ。住民の代表として警察組織をチェックするはずの公安委員会は完全に取り込まれ、都道府県の監査委員も全く機能していない。

 現場の警察官は不正経理を1日も早くやめてほしいと望んでいる。(警察不祥事続発を受け、国家公安委員会が平成12年に発足させた)警察刷新会議が警察の情報公開を提案した13年度から、捜査費の支出額がはっきりと減少に転じている。情報公開こそが警察の組織的不正を払しょくする最も効果的な手段だ。

 第2 非開示処分取り消し請求訴訟

 県情報公開条例は、開示請求に対し原則公開するものとし、例外的に、公共の安全や秩序に支障を生じさせたり、個人を特定するなどの情報に該当する場合のみ非開示にできるとしている。

 第3 非開示・部分開示理由の記載方法の違法

 (略)

 第4 県情報公開条例6条1項4号(開示により、犯罪予防など公共の安全と秩序の維持に支障を生ずる恐れのある情報に当たるとして非開示とするもの)に関する問題

 県警は非開示の理由を「捜査の動向が明らかになり、容疑者などに逃亡、証拠隠滅される恐れがある」などとする。しかし原告が開示請求したのは平成14年度の文書で、既に捜査が終了した事件の動向が把握されることはあり得ない。

 「捜査協力者が特定され、容疑者などに危害を加えられる恐れがある」とも主張するが、このような「恐れ」がすべての協力者に一律に生じるわけではない。開示請求した個々の文書について県警側が非開示理由の該当性を真摯(しんし)に検討した形跡は全くない。

 第5 同条例6条1項2号(特定の個人が識別されると認められる情報として非開示とする)に関する問題

 (略)

 第6 条例6条2項(非開示によって保護される利益に、明らかに優越する公益上の理由があれば開示するもの)に基づく開示義務

 警察の組織的な不正経理をなくすことが、「公益」に合致することは誰にも異論はない。北海道警の内部調査で平成10―12年度に約14億円の不正経理が明らかになったほか、静岡、福岡、愛媛県警でも不正経理が明らかになっている。

 オンブズマンが県警内部から入手した「捜査費執行状況等一覧表」について、県警は証人尋問で徹底的に(証言を)拒否する態度に出た。

 一覧表に記載された捜査員9人は作成年度の平成14年度に本部捜査一課に実在している。一覧表の内容は「捜査員名」以外は虚偽だが、その記載通り公金支出されたとして会計処理しており、公文書の「捜査費支出伺」「支払精算書」「領収書」の記載内容も虚偽ということになる。一覧表が外部に出たのは、不正経理をやめてほしいと望む職員がいるからだ。

 高知新聞は平成15年7月以降、県警の不正経理問題を頻繁に報道するようになった。証人尋問で、14年当時の捜査一課総括補佐は(原告側が提出した)他県の不正経理に関する証拠書類を「見ておりません」と繰り返したが、同様の問題で社会的な非難を浴びているにもかかわらず、全く見ていないというのはあまりにも不自然である。

 高知新聞の取材に対し、捜査員の何人かは虚偽文書などの作成を認めているにもかかわらず、総括補佐はその捜査員を捜し出したり、監察の対象にしていない。

 総括補佐は協力者に支払う謝礼金額の幅を「職務上の秘密」として回答しなかった。これは(後に尋問された)現職、OB捜査員の証言との食い違いを恐れたからで、実際に支払われていないから答えられなかった。

 本件文書はすべて実際の捜査内容とは異なる虚偽だ。文書の非開示部分をすべて公開することこそが、(条例6条第2項に示される開示理由の)「文書を開示しないことにより保護される利益に、明らかに優越する公益」に合致する。

 

▼県警側 非開示前提に裁量権

 第1 本件公文書の部分開示・非開示決定

 (略)

 第2 本件公文書の性格などについて

 本件公文書は捜査費の支払証拠書類で、事件名や捜査員、捜査協力者の氏名が記載され、個々の執行状況は捜査活動の実態を反映する。捜査情報の取り扱いには特段の注意義務があり、県情報公開条例でも開示・非開示の(裁判所の)司法判断には、実施機関(県警本部長)の一次的な判断を尊重するとされている。

 特に捜査協力者は秘匿を前提に協力する場合が多く、開示されれば捜査に重大な支障を来す。氏名や捜査費の交付年月日などは開示できない。

 県情報公開条例6条2項は「当該公文書を開示しないことにより保護される利益に明らかに優先する公益上の理由があると認められるとき」は開示すると規定する。これは「実施機関の判断」で開示を「可能とする」と解釈され、非開示を前提にした上で実施機関に裁量権を与えた規定だ。

 捜査費を不正執行しているとの原告の主張の根拠は(オンブズマンが入手した内部文書として証拠提出した)「捜査費執行状況等一覧表」と高知新聞の一連の報道だが、いずれも根拠がない。

 一覧表は当時の本部捜査一課の総括補佐が作成したものではなく、出所不明だ。原告は「裏金をつくっている」などとする高知新聞の記事を証拠提出したが、(証人尋問で)総括補佐と現職、OB捜査員はいずれも捜査費は適正執行したと証言した。「県警幹部から口封じされた」などとする記事の指摘もあり得ない。

 情報提供者への謝礼交付について、証人尋問で総括補佐と現職捜査員の間で、支払精算書の「支払事由」欄の記載要領が食い違ったと誤解されているが、協力者から領収書が取れた場合は原則として氏名・住所は書かない▽取れなかった場合は氏名・住所と取れなかった理由を書く▽取れなかった場合で氏名などを明らかにできないときはその理由を書く―の3通り(の記載方法が)ある。

 総括補佐は領収書が取れた場合を想定し、原告側代理人の質問に「(支払事由欄に誰に払ったかは)書かない」と証言した。現職捜査員は領収書の有無を特に区別せず「(支払事由欄に住所・名前は)出る」と証言した。2人の説明に矛盾はなく、原告側代理人が証言を正しく理解せず混乱しただけだ。

 平成16年5月の会計検査院による県警の14―15年度の実地検査は、捜査一課に対し、マスキング(黒塗り)なしで支払証拠書などの書面検査や捜査員3人からの聞き取りなど、同課の立ち会いがない状態で個別の執行について従来に増して厳格だった。

 その結果まとめられた検査報告には、激励慰労会については県警を特定せず、警察庁の指導に適合しない例が見受けられたと指摘があったが、本県の捜査費について特段の記載はなかった。

 15年8―9月の県監査委員の事前、定期監査でも、激励慰労費に意見が付されたが、捜査費に特段の指摘はなかった。

 第3 非開示理由

 捜査費は各月分の所要額が取扱者に交付され、さらに個々の捜査員に交付される。各月分の捜査費の情報は捜査活動に密接に関連している。

 特定所属の月額を公にすれば、毎月の変動状況と報道などから捜査の進展状況が推察される。県警本部の主管課と警察署の捜査費の変動状況を分析すれば、どんな犯罪がどの地域で捜査中かも推察可能だ。前月からの繰越額や残額も、開示すれば捜査が当初の見込み通りに進展したかどうか明らかになる。

 原告は「捜査が終結すれば(開示しても)支障がない」と主張するが、組織犯罪や贈収賄事件は端緒から摘発まで長期の内偵を要する。(月別の執行額は)事件終結から少なくとも3年が経過するまでは非開示にする必要がある。

 原告は「協力者名がペンネーム(偽名)なら開示しても実害はない」と主張するが、筆跡や日時から協力者を割り出すことは可能だ。文書の枚数から捜査の進展状況などが推察される恐れもあり、個別の執行情報は一切開示できない。


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