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「捜査費問題を聞く」(上) ジャーナリスト 大谷昭宏氏 揺らぐ警察の正義 外部監察機関つくれ(2004年12月19日・朝刊)
昨年、高知新聞や北海道新聞の追及で表面化した警察の捜査費不正問題。その後も全国で相次いで発覚し、北海道警などは不正を認め返還方針を決めた。高知県警は今も疑惑を全面否定しているが、今年11月の捜査費関連文書開示訴訟では現職警察官らの証言が食い違いを見せるなど、不審は一層深まっている。警察は信頼回復できるのか、新聞は警察権力にどう向き合うべきなのか―ともに記者出身で、警察問題に詳しいジャーナリストの大谷昭宏氏と、新聞学専攻の同志社大教授の浅野健一氏に聞いた。
警察組織は不正を暴くところ。警察もわれわれの仕事も「社会正義の具現」だ。法律は社会正義を具現化させるための手段。正義が揺らいで(法律という)手段だけ持っているから悪用する。 【写真説明】「捜査費問題の解決には、国会の力が必要だ」と語るジャーナリストの大谷昭宏さん(大阪市北区の事務所) ――高知県警や北海道警など、捜査費問題は地方紙の追及で始まった。なぜ地方でしか表面化しないのか。 警視庁や大阪府警は、うまくごまかしているだろうし、新聞記者が本気で追及する気がない。記者クラブが警察に取り込まれている。東京、大阪は日々、記者同士のし烈な特ダネ競争がある。警察が腐っていようと、「自分の出世まで棒に振ってやることはない」と記者が考える。警察と一緒で記者が保身に走る。 警察におべんちゃら言って、不正を追及することをせず「特ダネだ」なんて喜んでいるのは、自分が取ったネタじゃなくて、放られた餌に食い付いているだけだ。 ――権力機関に向き合うマスコミの姿勢も問われていると。 地方権力とメディアが離れていけば、いずれ中央権力とメディアが離れるきっかけになる。いきなり中央権力とメディアが、いい緊張関係を持つのは難しい。まず地方からやればいい。本当の意味での地方分権もそういうところから始まる。 ――高知県警の捜査費問題は市民団体の告発で、地検が捜査している。展開の予想を。 マンパワーからいって警察と検察では違う。警察は27万人。検察は3000人ぐらい。多勢に無勢だ。検察は独自の捜査権を持っているが、現実に検察が警察を動かすなんてできない。警察の手の上で踊らされているようなものだ。警察のご機嫌を損ねるようなことを検察がやるはずがない。 ――捜査費の不正を解決する方策は。 国会の力だ。メディアの追及を受けて国会が動かないと駄目だ。東京のメディアは、警察庁の顔色をうかがいながら幕引きに走ることばかりしないで、そろそろ性根を入れてほしい。 それと外部監察機関だ。公正取引委員会ぐらいの権限を持った機関で、捜査権も持たせる。公権力の行使機関で外部監察がないのは警察ぐらいだ。 加えて、捜査費関連の公文書を事後公開すればいい。アメリカは軍事機密でも時間がたてば公開する。「50年後、25年後に公開する。だから捜査費を下さい」と言わないと、現状では国民の理解は得られない。 ――警察は「警察を管理する公安委員会がある」と言うだろう。 それは、外部監察機能をつくられたくないための言い訳。できないなら、公安委員会をもっと充実させるべきだ。高知なら3人を10人にする。委員に犯罪被害者の家族、女性を増やし、会計のプロを入れてもいい。 ――今の新聞に直言を。 警察の不祥事をたたいたら取材がしにくくなるというのは大間違いだ。確かに警察はひどい組織になったが、多くの人は社会正義のため警察官になっている。現状を心苦しく思っているだろう。どのメディアが内部告発の受け皿になり得るか。良識ある人はよく見ている。 ――警察には。 例えば、突入したら間違いなく受傷事故が起きる立てこもり事件があったとする。幹部が「今から部隊を10人編成する」と言えば、捜査員は全員が手を挙げるだろう。この組織はまだ、そういう警察官に支えられている。現場の人間が夢を持てるような組織にしてほしい。それができない幹部には「去りなさい」と言いたい。 ……………………………………… おおたに・あきひろ 昭和20年東京生まれ。43年、読売新聞社大阪本社入社。社会部で大阪府警捜査一課などを担当。62年退社し、大阪に事務所を設け、テレビや新聞などでジャーナリズム活動を展開している。
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