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貝になりたい (夕刊「話題」)
(2004年11月19日・夕刊)
「生まれ変わるなら人間になるのはもういやだ。貝だったら深い海の底でへばりついていればいいから何の心配もない。戦争もない。兵隊に取られることもない。生まれ変わるなら、私は貝になりたい」
故フランキー堺さんが主演したテレビドラマ「私は貝になりたい」。昭和30年代の作品で、再放送を見たことがある。フランキーさんが演じるのは、高知県で理髪店を営む気の弱い男、豊松。戦時中、豊松に軍隊召集の赤紙が届く。豊松は新兵の訓練として、ひん死の米兵捕虜の殺害を上官に命じられる。戦後、高知に戻った豊松は戦犯容疑者として警察に捕まり、軍事裁判で死刑を言い渡される。
先日開かれた県警の捜査費関連文書の開示訴訟。現職警察官ら3人が証人尋問を受けた。証言は随所に食い違いを見せたが、捜査費については「適正に執行した」に終始した。証言内容を新聞で見た県警幹部OBは「後輩にうそをつかせて申し訳ない」。そして「上司の指示でうそを言わされていることは容易に想像できる。警察はそれぐらいはする」とも語った。
「上官の命令に逆らえば命はない」。ドラマの豊松は裁判で必死に訴えたが、取り合ってもらえなかった。3人は捜査費の不正を裁判所に訴えることはなかったが、大げさに言えば豊松と同じ心境だっただろう。強大な権力と弱い一個人の構図は今も昔も変わらない。
ある現職捜査員は「誰が(記者に捜査費の不正を)しゃべったのか、という犯人捜しばかり。いやな職場だ」と語った。「生まれ変わっても捜査員をやりたい」と胸を張れる人が今の県警にどれだけいるだろう。古いドラマを思い出し、そんなことを考えた。(竹内誠)
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