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ありきたり (夕刊「話題」)
(2004年10月23日・夕刊)
前例に従う。あらゆる役所の中でも、裁判所ほどこれを忠実に守っているところはないと思う。裁判所に何かお願いをしても「例がないから駄目」と断られることがよくある。高知地・家裁の新庁舎が完成したときのこと。記者室ができるというから、電話やコピー機を設置したいと打診したが、「最高裁に相談する」と言った後「全国で例がない」と断られた。闇融資の判決の際、あまりの傍聴希望者の数に「法廷のいすを増やしては」と提案したが、これも「前例がない」だった。
判決でも、前例となる「判例」を大切にする。最高裁への数少ない上告条件の一つにも「判例に反する判断」がある。とにかく前例第一主義の役所。そんなイメージがある。今どき希少価値があるぐらいで、半ばあきれながらも、ひそかに「一つぐらいこんな役所があってもいいか」ぐらいに思っていた。
高知地裁の幹部職員が女性職員にセクハラ(性的嫌がらせ)をしていたことが発覚した。お堅い職場で、こんなことがあるのかと驚いたが、幹部職員の事後の対応に、裁判所の希少価値は消え去った。
トップの所長をはじめ、次々と幹部が降格になるという前代未聞の不祥事を隠ぺいしていたことはもちろん、女性職員との秘密裏の示談交渉に立ち会った幹部職員の「所長を守れず申し訳ない」の言葉。この姿勢も前例に従ったのだろうか。裁判所も、実は「ありきたりの役場」だったことが露見した。
1年以上前、県警の捜査費問題の取材をし始めたころ、県警幹部に言われた。「本部長に恥をかかせるわけにはいかない。書くな」。今回のセクハラ問題と同じような発想。うんざりしてきた。(竹内誠)
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