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プロの失態 (夕刊「話題」)
(2004年3月25日・夕刊)
因果な仕事だと思う。個人や組織が隠していることを聞き出したり、調べたりすることがある。相手によっては「書くな」「どうなるか分かっちゅうろうな」とどう喝する。逆に土下座する人もいた。「(金が)なんぼ欲しいがな」と言われたこともあったし、玄関先で塩をまかれたこともあった。仕事とはいえ「書くのがつらい」と思うことがしばしばある。
悪いことばかりでもない。取り付く島もなかった人が、何度も接するうちに心を開いてくれることがある。こんなにうれしいことはない。「誠意と粘り」。青臭いようだが「人の話を聞く」仕事は、それが大切だと思う。
人と対峙(たいじ)して取り調べをする警察官や検察官にも通じることだろう。場合によっては「話せば死刑」にもなる世界。そんな相手から全面自供、ざんげの言葉まで引き出す彼らを「話を聞くプロ」だと、ひそかに尊敬している。
だが、その思いを打ち砕かれる出来事があった。捜査費問題での高知地検の対応だ。市民団体の刑事告発を受理した地検は、県警捜査一課の9人の捜査員から事情聴取した。彼らは上司の求めに応じて虚偽の会計文書を作成、架空の捜査協力者に謝礼を支払ったことになっている。真相究明のキーマンだ。
そんな重要な場に、地検は捜査一課から研修で派遣されている刑事を事務官として聴取に立ち会わせ、「適正に執行してますよね」と切り出した。誠意も粘りもない聴取。捜査員は「県警に話が筒抜けになると思った」「地検が信用できなかった」と真実を語らなかった。
秋霜烈日、厳正公正を標ぼうするプロの、取り返しのつかない失態だった。(竹内誠)
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