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(2004年3月6日・朝刊)
ふた昔も前のことなのに、都内で聞いた講演のことが印象に残っている。
講師の名前は松橋忠光さん。警察庁の元幹部。それまでのタブーを破り、実名で警察内部の不正経理を告発した。抑えた口調ながら、人を取り調べる組織でまかり通る不正を指弾し、見逃してきた自身の行為を恥じていた。
捜査用報償費をめぐる北海道警元釧路方面本部長、原田宏二さんの告発は「第二の松橋現象」と言える。組織ぐるみの裏金づくりの実態を2度も実名で証言した。先月は記者会見、今度は道議会で。「幹部だった自分が匿名のわけにはいかない」。これが実名の動機だった。
一線の署長時代は毎月5万円前後、道警本部の部長や釧路方面本部長時代は7、8万円―受け取った裏金の証言は具体的だ。金額は少ないものの、出向先の警察庁や山梨、熊本両県警でも似たようなことが行われていた。
厚いベールに覆われていた警察内部の不正が明るみに出るようになった。北海道では黙っていられなくなった、と元警察署次長が実名告発に踏み切った。高知県警の捜査費問題でも、市民団体が設けた「県警情報110番」に県警OBらから情報が寄せられている。
「上の人間が変わろうが変わるまいが、(裏金づくりの)システムは自然に動いていた」(原田証言)。このことは、どの警察組織にも当てはまるのだろうか。6年前に亡くなった松橋さんの告発本には「わが罪はつねにわが前にあり」(オリジン出版センター)という題がついている。
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