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【2003年回顧】 社会を閉塞感が覆う(2003年12月29日・朝刊)
2003年が過ぎようとしている。国際的にはイラク戦争に象徴される激動と破壊、混迷と混乱の1年だったが、国内もその世相を反映した暗いニュースが飛び交った。 不況に端を発する漠然とした先行き不安は以前からあったが、ことしはそれに追い打ちをかけるように、従来の常識では考えられない事件、事故の発生が連続し、社会を閉塞(へいそく)感が覆った。 懸念されるのは、重大事案の多くが単発的ではなく、今後も発生する恐れがある点だ。この現実をどう受け止め、対処していくのか。私たちは真剣に考えなくてはならない。
▼狙われる弱者最も社会に衝撃を与えたのは、長崎市で起きた男児誘拐殺人事件だろう。幼い子供を全裸にし、ビルから突き落とした残忍事件の容疑者は、中学1年の男子生徒だった。神戸の児童連続殺傷事件から6年余り。少年の重大事件の背景にある社会的原因とその対処方法が解明しきれていないことを如実に示した。子供たちが被害者となった犯罪はほかにも多発した。誘拐、監禁されたり、行方不明になる事件が全国で発生、いまだに未解決のものもある。大阪教育大付属池田小学校で起きた児童殺傷事件の犯人には死刑判決が出たが、同じような事件が後を絶たない。 狙われたのは子供だけではない。「おれおれ詐欺」のように、お年寄りをはじめとする社会的弱者を狙う犯行も目立った。架空請求事件やヤミ金融問題もこの範ちゅうに入る。今後も注意を喚起する努力が欠かせない。 このように、難事件が頻発しているにもかかわらず、犯罪を摘発する側の警察や検察の問題点が明るみに出た。 本県をはじめとする幾つかの県警で捜査費の虚偽請求や不正流用の疑惑が浮上、検察庁が情報収集のために使用している「調査活動費」が不正に流用されていたことも司法の場で認定された。 社会正義を実現する機関が不正に手を染めているようでは、犯罪を根絶できるはずもない。これまでの行為を真摯(しんし)に反省し、正常な組織に生まれ変わるよう、強く求める。
▼大規模労災が多発大規模な労働災害が多発した年でもあった。三重県のごみ固形燃料発電所や新日本製鉄名古屋製鉄所、ブリヂストン栃木工場、エクソンモービル名古屋油槽所、出光興産北海道製油所など、枚挙にいとまがない。日本企業の安全意識が著しく低下していることを物語る。レベルの低下は安全面だけではなく、技術面にも出てきた。H2Aロケット6号機や火星探査衛星など、宇宙開発をめぐる失敗の連続はその象徴だ。日本全体がもう一度原点に立ち戻り、組織の在り方を見つめ直す時期がきている。 このほか、情報化社会をめぐるさまざまな課題が浮上した。 今夏、新種のコンピューターウイルス「ブラスター」がインターネットを通じて、世界中にまん延、日本でも大きな被害が出た。ウイルスの対象はマイクロソフトの基本ソフトだけ。ネット社会の基礎をなすものが、1社、1商品に集中する危険性を見せつけた。 ネット絡みでは、出会い系サイトをめぐる犯罪やネットで知り合った者同士の心中事件の多発なども社会問題化した。住民基本台帳ネットワークが外部からの侵入が可能な点も重大問題だ。ネット社会における社会防衛のあり方について、さらに突っ込んだ論議が必要だ。 明るい話題が多かったのはスポーツ界だ。阪神の優勝は社会現象となり、日本全土を沸かせた。大リーグに渡った松井選手、陸上の末続選手、水泳の北島選手など世界を舞台にした大活躍が、日本全体に勇気を与えてくれた。 常に前を向き、立ちふさがる壁を打ち破るこうした姿勢が、今の日本には不可欠だろう。来年はいったいどんな年になるのか。私たち一人ひとりの行動が社会のあり方を左右することは間違いない。
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