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高知県警捜査費問題

捜査費報道に高い評価 高知新聞「新聞と読者」委員会

(2003年10月16日・朝刊)
委員4氏と本社側が活発な論議を交わした第5回新聞と読者委員会(9月12日、高知新聞社)  高知新聞社は第56回新聞週間(15―21日)を前に9月12日、取材・報道姿勢を社外有識者の目で検証する第5回「新聞と読者」委員会を高知市本町3丁目の本社で開いた。委員4人と本社側から岩井寿夫社長ら幹部8人が出席。藤戸謙吾・常務取締役を司会に、本紙の夕刊紙面改革▽県警の国費捜査費虚偽請求問題▽「官」の情報をどう伝えるか▽よさこい祭り報道▽「監視社会」をどう見るか▽イラク復興支援特別措置法(イラク特措法)―の6つをテーマに、3時間以上にわたって活発な意見を交わした。捜査費問題についての本紙報道に対しては各委員から「新聞のあるべき姿を示した」などとおおむね好意的な意見が出される一方、「官」情報の取り扱いをめぐっては、結果的に誤りだった海洋深層水の水銀混入騒動を教訓に、より慎重な報道姿勢を求める指摘もあった。

 【写真説明】委員4氏と本社側が活発な論議を交わした第5回新聞と読者委員会(9月12日、高知新聞社)

 ■出席者■

 〈委員〉50音順

 小椋克己・県立坂本龍馬記念館館長

 松本秀正・前県経営者協会専務理事

 水野博之・前高知工科大副学長

 溝渕悦子・弁護士

 〈高知新聞社〉

 岩井寿夫・代表取締役社長、小笠原俊明・専務取締役、藤戸謙吾・常務取締役、山本邦義・取締役編集局長、宮村憲章・論説委員長、片山茂・社長室長、松尾洋一・編集センター長、宮田速雄・報道センター長

▼県警の捜査費報道 「聖域」許されぬ時代 

「不可侵分野よく報道」水野氏 「県警は合理的説明を」溝渕氏

 藤戸 捜査費報道について意見を伺いたい。本紙は7月23日付朝刊の1面で、県警本部捜査一課が昨年4月から10月の間、警察庁に対し、架空の捜査協力者を仕立てて196万円の国費捜査費を請求していた問題を報道した。この報道は読者からかなりの反響があったが、県警は真っ向から報道内容を否定し、警察庁や会計検査院も静観の姿勢を示している。報道の是非やその内容について意見を伺いたい。

 水野 よく報道したと思う。警察は、今の日本に残っている唯一のアンタッチャブル(不可侵)な分野だと思うからだ。こういう問題は新聞が先頭に立って報道してほしい。この問題には、すぐに「捜査上の秘密」が出てくるが、捜査協力者の保護と請求問題の違法性は分けて考えるべきだ。正当な予算なら正当に手続きをすればいい。

 小椋 捜査協力者の実名公表は、とてもじゃないができない。公表できないから架空が入り込んでくる。それがこの問題の表と裏になっている。架空請求をやめさせるにはどうすればいいか、今回の報道はその方法を考える一つのきっかけになったと思う。

 松本 私もよく取り上げたと思う。この問題は高知だけでなく、全国的に行われていると思われる。あきらめず追及することが大切だ。情報公開は時代の要請で、こうした請求方法はいつまでも通用しない。もはや「聖域」を残しておける時代ではないと、当局は認識しなければならない。

 溝渕 私は県公文書開示審査会の委員を務めている。県警(本部長)と県公安委員会は県情報公開条例の実施機関になっているが、一番問題なのは、条例上、情報を非開示にできる「犯罪捜査に支障を生じる恐れ」があるかどうかは実施機関が判断することになっていることだ。理由は捜査は専門的だからというのだが、私たち委員はまさにその「判断」が合理的かどうかを判断することになる。

 小椋 今回の問題は問題提起の意義があった。新聞が、あるべき姿を見極めようとする、リード役を果たしたと思う。

 本社側 事件捜査を取材していると、正規に支出を認めればいいのにと思うものでも捜査員が身銭を切っている現状があるのも事実。社会常識として、必要な経費はきちんと出すシステムがあればいい。

 水野 外務省の外交機密費問題にはあぜんとさせられた。権力の中枢にいる人にこそ自浄作用が求められるが、変えようとする姿勢が少しも見られないことが最大の問題ではないか。「いや、少しも間違っていない」というのは極めて危険な兆候でもある。

 溝渕 県警も単に「捜査上の秘密」と言うだけでは説明不足。どういう情報が含まれているから秘密にしなければならないと、合理的に説明しなければ県民の理解は得られないだろう。具体的な説明は無理でも、一般的にどういうことに使っているかすら、私たちには予測がつかない。

 本社側 捜査費問題はずっと昔から言われていた。今回報じたのは、報道できるだけの裏付けが取れたからで、単に県警を批判しようとか、ためにする目的は全くない。聖域のない今の時代、県警のこうした古い体質を改めるべきだという考えから報道した。今回の報道で捜査費の請求、支出方法に何らかの変化があれば所期の目的を果たせると考えている。

 …………………………

 捜査費の虚偽請求問題 捜査費問題を高知新聞が最初に報じたのは、7月23日付朝刊。県警本部捜査一課が昨年4月から10月の間、警察庁に対して架空の捜査協力者名を使うなど虚偽の書類を作成して、国費捜査費約196万円を請求していたと1面で報じた。

 これに対し、県警側は「捜査費は適正に支出されている」と全面否定。警察庁や会計検査院もこの報道に対し事実上、静観の姿勢を示した。

 その後、市民オンブズマン高知が匿名の人物から、捜査費の内部資料とみられる文書を入手。本紙の報道内容を裏付ける内容だが、県警は県議会総務委員会で「県警内には存在しない文書だ」と否定した。

 本紙はさらに8月20日付朝刊で、本部捜査二課が昨年7月に国費捜査費を使って汚職事件の慰労会を開いていたと指摘。県会計課は「県費捜査費なら認められない」としたが、県警は総務委員会で、県費でも同様に慰労を行っており「今後も続ける」と説明。県と県警の間で、捜査費の扱いをめぐって認識のずれが浮き彫りになった。

 この後、本紙の県警に対する情報開示請求により、13、14年度に県警全体で実に66回、総額385万円の捜査費が使われ、よさこい高知国体やサッカーワールドカップの慰労会を開いていたことが明らかになった。

 県費捜査費を監査する県監査委員は9月26日、県警に対して今後の慰労会への支出を取りやめ、支出した県費の自主返還を促す監査委員意見を提出。県警の黒木慶英本部長は同月30日の県議会質問戦でそれまでの姿勢を転換し、今後は県費捜査費を使った激励慰労は行わない方針を示した。

 一連の捜査費問題に対し、市民オンブズマン高知は本部捜査一課長らを詐欺罪などで高知地検に刑事告発したほか、捜査費関連の公文書開示を求め高知地裁に民事訴訟を起こしている。

 …………………………

 水野博之氏(みずの・ひろゆき) 理学博士。専門は固体物理、光エレクトロニクス。元松下電器産業副社長。スタンフォード大顧問教授を経て、高知工科大大学院起業家コース長、同大副学長を歴任。現在は同大総合研究所所長、立命館大客員教授。著書多数。74歳。

 松本秀正氏(まつもと・ひでまさ) 土佐電気鉄道で常務取締役、常任監査役を務めた後、県経営者協会常務理事、専務理事を歴任。6月から参与。県収用委員会委員、県地方労働委員会委員、高知市文化振興事業団理事、同市シルバー人材センター理事。69歳。

 溝渕悦子氏(みぞぶち・えつこ) 昭和46年、第二東京弁護士会に弁護士登録。55年に高知弁護士会に登録替え。平成8年度に同弁護士会会長を務める。県女性相談所と県児童相談所の法律相談を担当。高知市教育委員会委員、県公文書開示審査会委員。60歳。

 小椋克己氏(おぐら・かつみ) 高知放送で放送部長、アナウンサー室長、役員待遇ニュースキャスターなどを歴任。退職後の平成3年から県立坂本龍馬記念館館長。高知市文化振興事業団理事、高知市民生児童委員、土佐電鉄の電車とまちを愛する会会長。74歳。


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