9月22日の秋分の日、「ボンファイアーをするからおいで」と誘われて、ミズーリ州コロンビア市郊外で牧場を営む泰世(やすよ)ちゃんのところに出掛けました。卵や鶏肉などの畜産品を朝市や自然食品店で販売している彼女ですが、そのお得意さまを招くホームパーティーで、豪快なたき火をするというのです。
初めて泰世ちゃんに会ったのは、日本文化を紹介しに小学校へ行った時。実はこの学校の先生がお得意さまの一人で、彼女も「どうしても」と頼まれたのだそうです。
さいたま市出身でフルネームは泰世・宮口・ノール。東京での会社勤めを経てミズーリ大学に入り、そこで知り合ったマイクさんと卒業後に結婚しました。そして、3年ほど前に30エーカー(約12ヘクタール)の牧草地を購入し、夫婦で牧場経営を始めました。
牛10頭、リャマ2頭、ヤギ10匹に鶏が約800羽、七面鳥50羽、アヒルが18羽にガチョウが6羽、それに犬2匹、猫1匹といった大所帯。トマトやピーマンなどの無農薬栽培もしています。
昼間は医学部図書館で働き、夕方からマイクと2人で動物や作物の世話をするという彼女、一体いつ休んでいるのか不思議なくらい、いつも忙しそうです。
昼間は放し飼いでも、夜はアライグマやキツネ、スカンクから守るため、小屋に入れます。でも、動物を集めるのが毎日大変!
あちこちでかくれんぼをする鶏、蛍を夢中で追い掛けるアヒル…。集団で小屋を脱走し、車に上ってダンスをするヤギを降ろしたり、3匹も奥さんがいるのに隣の牧場で若い雌牛を追い掛けていた雄牛を捕まえに走ったことも。
ここの動物は人懐っこさも一流です。中でも七面鳥は好奇心が旺盛で、泰世ちゃんがアヒル小屋を修理していた時のこと、気配を感じて振り返ると、十羽余りがお行儀よく一列に並んで、ジーっと彼女を観察していたとか。
ヤギの出産に初めて立ち会った時のことは、とりわけ印象に残っているそうです。
「ここにいると、やりたいことをやりたい時に自由にできる。そして、周りの人がスムーズに受け入れてくれる気がするのよね」と彼女は言います。「私たちの、小さいながらもアメリカン・ドリーム」という牧場経営は、アメリカだからこそ実現したのだと。
でも、東京でOLをしていた女性が、やはり素人の夫と2人で牧場を維持するには、勇気以上のものが必要だったはず。話を聞いていると、並々ならぬ努力と、自分が選んだ道を貫こうとする意地、いえ、強い意志を感じずにはいられません。
さて、パーティーには昼すぎから四十人余りが家族連れで集まりました。泰世ちゃんご夫婦が用意した自家製チキンのバーベキュー、デビルドエッグ(ゆで卵の料理)、トマトサラダなどに加えて、お客さんが持ち寄った各種の豆料理や野菜パイ、焼きトウモロコシ、ビールなどが所狭しと並べられました。
日が暮れ始めると、お待ちかねのボンファイアーです。5メートルほども積み上げられた丸太や枯れ木に、マイクがガソリンを振りかけて点火しました。
闇に向かって燃え上がる炎と雪のように舞う火の粉、その向こうには満月という、幻想的にすら思われる光景を眺めながら談笑。忘れられない楽しい思い出が、また一つできました。
(土佐市役所職員、米ミズーリ州立大コロンビア校留学中、コロンビア市在住)
【写真】ホームパーティーでくつろぐ泰世ちゃんと夫のマイクさん=中央の2人(米ミズーリ州コロンビア市郊外)
ノール夫妻の牧場のホームページアドレスは次の通り。
http://members.sockets.net/〜smknoll/mainwindow.html
(平成14年10月21日付朝刊掲載)
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