この夏休みは、州都ジェファーソンシティにある、ミズーリ州立情報センターの文書館で、6週間にわたって実習に参加しました。
情報センターは最新の、または歴史的価値のある州内の公文書や写真などを保管して、州民に提供するための施設です。
中でも、長期間保存する価値のあるものを専門に取り扱うのが文書館です。また、郡や市町村の役所職員に効率よく経済的な公文書の管理法を教えることも、文書館で働くアーキヴィスト(文書保管の専門家)の役割の一つです。
州政府や州内の自治体から公文書が回ってくると、まず文書館のアーキヴィストが保存に値するかどうかや保存の期間、方法について吟味します。その指示に従って、傷みの著しい文書は修復研究室に回され、そうでないものは直接、撮影室でデジタル映像化やマイクロフィルム化されます。その後、あるものは情報センターに保管され、あるものは自治体に返され、またあるものは廃棄されます。
文書一つ一つについての情報はデータベースに記録され、州民に広く公開されています。特に、アメリカでは自分の先祖をたどる系譜学が一般にも人気があり、系図作りに励む人々が連日、文書館を訪れていました。
実習中、私は19世紀後半の地方裁判所に持ち込まれた民事訴訟記録をデータベース化する作業に参加しましたが、どれも描写が生き生きとしていて、読んでいて面白かったです。
例えば、ある離婚訴訟は「結婚した途端に夫が寡黙になり、私に笑いかけてくれなくなった」という妻の訴え。そんなことが離婚の正式な理由になり得るんだと驚いた半面、一緒に作業をしていたボランティアのおばちゃんたちの「そんなだんなとは、一緒にいてもつまらないもんねえ」という言葉に、なるほどなあと納得したり(?)。
文書館では、思いがけず土佐典具帖紙(てんぐじょうし)と出合うことができました。年月を経てぼろぼろになった文書類を修復する研究室でのことです。ここでは世界各地から取り寄せた手すき・機械製の紙を使って、古い文書に裏打ちをしたり、つぎを当てたりして、できるだけ元の形で長期保存するよう努めています。
中でも、典具帖紙の薄さ、繊維の長さ、ほかの紙とのなじみの良さは群を抜いているため、永久保存が求められる重要文書には、必ず使うそうです。実際、専門家が典具帖紙を使って修復した文書や絵地図は、相当に注意しないと直した部分が分からないほどの美しさでした。
けれど、いざ自分でやってみると、典具帖紙の薄さが災いして大ざっぱな私には扱いが難しく、経験が必要な仕事なんだなあ、と実感しました。
修復専門家の一人であるキャシー・アトウッドさんは、大学で和とじ本の研究をしていたという大の日本びいき。「土佐和紙の国から来る実習生」である私を心待ちにしていたようで、私が手すき和紙についてあまり知らないとみるや、「もっと和紙のことを勉強しなさい!」と、大量の本やビデオを貸してくれました。
ここでは修復に、筆やはけ、数珠など、日本の伝統的なものが多く使用されていて、なんだか懐かしい気持ちのする実習でした。
(土佐市役所職員、米ミズーリ州立大コロンビア校留学中、コロンビア市在住)
【写真】修復研究室の洗浄槽で専門家のサンディ・ヘンプさんと古地図を洗う。適度に表面を湿らせ、脱脂綿やスポンジなどで優しくなでて汚れを取ります(米ミズーリ州立情報センター文書館)
(平成14年8月20日付朝刊掲載)
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