連載もついに最終回。「まだ、書き足りない」気持ちでいっぱいだ。最後は、モンテレイで暮らし始めて感じた「ホームドラマのような温かい日本人の絆(きずな)」や「日本の良さの再発見」について書いてみる。
思えば、メキシコという国は、夫と出会っていなかったら、興味すら抱いていなかったに違いない。当初は文化や風習の違いに戸惑い、時間のルーズさに腹を立て、駐在妻という肩書に拒絶反応を示し、狭い日本人社会の人間関係に悩んだのも事実だ。見るものすべて、生理的に受け入れられず、帰宅の遅い夫に愚痴をこぼす毎日だった。そんな私が、今では「メキシコは愛にあふれた国だよ。それはね…」と大ファンに変ぼうした。変われば、変わるものである。
街には、日本人経営の和食レストランが5つ。お気に入りは手作りラーメンが食べられる店だ。オーナーは毎日麺(めん)を手打ちし、メキシコ産食材でおいしい日本食を作る名人だ。いつも元気で明るい笑顔に会うために、週に数回はラーメンと“おふくろの味”を食べに通っている。
日曜日には、知り合いの日本人が集まっておしゃべり。こちらでなければ、店主やお客さんと気軽に話したり、店主と客という関係以上に付き合うなんてことはなかったろうな、と思う。
また、別のアットホームな日本食レストランのオーナー夫人・ユルマは大の仲良し。月に1度は日本人やメキシコ人の奥さんと一緒にランチをする。彼女は困った事があれば何でも相談に乗ってくれる頼もしい存在だ(夫が自宅に鍵を閉じ込め入れなくなった時に助けてくれた恩人だ)。
この店の夜は、居酒屋に衣替えしたかのような雰囲気に。カウンターでは駐在員のおじさん連中が酒を飲み交わす。店主は聞き役に徹し、みんなの“癒やしの場”になっている。日本だったら、知り合いになれないような人たちと気軽に話ができたり、顔なじみになるのがとてもうれしい。
「困ったことがあればお互いさま。協力してメキシコ生活を楽しく暮らそう」。日本を離れているためか、そんな意識が強い。風邪などで体調を崩した時、「食事作れないでしょ? これ、だんなさんに食べさせてあげてね」と差し入れをしてくれたり、人とのつながりが濃く、家族のような関係ができる。
いいアミーゴ(友達)にも出会えた。趣味の一つ、焼き物教室は散歩の途中で偶然見つけた。メキシコで陶芸を習うことになるなんて! 夢にも思っていなかった。日本をこよなく愛する陶芸家で工業デザイナーのマウさんと出会ったことから、彼の夢である「日本とメキシコの懸け橋となるような和風カフェ作り」を手伝うことになった。今年中の完成を目指して計画が進行中だ。
また、「過去世は日本人だったの」と言い切るアドちゃんは、日本のアニメ研究家で、大学で日本の文化や経済学を教えている。「初めて奈良の大仏を見た時は感動してたくさん泣きました!」という日本ファン。「結婚するなら日本人、大仏のような広い心を持った方がいいです」と彼氏を募集中(赴任生活が終わるまでに彼ができるといいな)。
こちらで高知出身者や高知にゆかりのある人と出会う機会も増えた。そのうち、土佐人会を発足して、よさこいをしてみたい。帰国するまでに、大好きな料理やダンス、語学もマスターして、生活面白体験本も書いてみたい…。まだまだやりたいことがいっぱいだ。
今後の報告は、私のブログ「愛の国に暮らせば」(http://yaplog.jp/mexico/)で。またお会いしましょう!
=おわり=
(
高知市出身。メキシコ・モンテレイ市在住)
(平成17年4月26日付朝刊掲載)