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南海地震

―― 視点 京都大学長 尾池和夫(地震学) ――

 日本海溝の地震活動 長期予測研究に注目

 2002(平成14)年7月31日に政府の地震調査委員会は、「三陸沖から房総沖にかけての地震活動の長期評価について」という発表を行った。それまでに、海域に発生するプレート境界の大地震として、宮城県沖地震及び南海トラフの地震についての長期評価を公表していた。それに引き続いて三陸沖に発生する地震活動を評価したのである。

 東北の太平洋側は、大地震のたくさん起こる地域で、津波も多い。海岸から200キロほど沖に深い日本海溝があって、そこから太平洋プレートが大規模に日本列島の下へ斜めに沈み込んでいる。そのプレート境界に巨大地震が起こる。

 プレート境界のさらに沖には、2004年に紀伊半島沖にもあったような大地震が起こって、大津波を起こすこともあり、陸に近い部分には、やや深い地震が起こって強い揺れを陸地にもたらせる大地震もある。

 京都では毎年8月16日は「五山の送り火」で多くの人たちが集まってくる。今年は桂キャンパスから送り火を見ようと出かけるときに、宮城県沖でマグニチュード7・2の地震があり、宮城県南部などで震度6弱の揺れがあった。深さが40キロほどだというので、これは以前地震調査委員会が指摘した宮城県沖地震がいよいよ起こったのかと思った。

 2000年11月27日に、地震調査委員会は「宮城県沖地震の長期評価」を発表している。宮城県沖から日本海溝までの間に大地震が繰り返し発生し、最近では1978年の宮城県沖のマグニチュード7・4の地震で大きな被害があった。ここでは二つのプレートの境界面で、牡鹿半島沿岸から東へ拡がった範囲で地震断層面が発生して大地震となる。歴史地震記録から、過去200年に6回の大地震があり、1978年から計算してもすでに平均活動時間間隔の60%を超えている。したがって、地震発生の可能性は年々高まっており、「2020年頃(ころ)までに次の地震が起こる可能性が高いと考えられる」という内容の発表をしていた。

 その長期評価との関係で臨時の委員会が開かれ、8月17日の夕方に「想定した地震とは言えない」と地震調査委員会は発表した。つまりまだ本命の地震がまだ残っているということである。さらに委員会は「今後、想定していた地震が起こりやすくなった可能性もあるとして、引き続き警戒が必要だ」と付け加えた。

 このような判断の根拠になるデータが時々刻々と得られるようになったのが、日本列島の地震観測ネットワークの大きな進歩である。今回も、余震の分布やGPSによる地殻変動の観測などがくわしく検討された結果の判断であろうと思う。津村建四朗委員長は「今回の地震によって、想定している宮城県沖地震の規模や発生確率は変更しない。いつ起こるかという見通しはむずかしいが、従来と同じように防災対策をとってほしい」と述べたそうであるが、位置関係によっては、本番の大地震の規模が少しだけ小さくなったということが言えるかもしれないし、逆にまったく影響しないという可能性もある。

 宮城県沖の地震活動は複雑で、かつ地震活動度が高い。岩盤がさまざまの場所でずれを起こしては大地震を起こす。東北大学の地震学者を中心に今後くわしい調査と研究が進められ、今回の地震の意味づけと、今後の長期予測に関する研究成果が次つぎと得られるであろうと注目している。  

2005年9月4日付朝刊掲載

 ※筆者の了解を得てホームページにも掲載しています。

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