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南海地震

―― 視点 京都大学長 尾池和夫(地震学) ――

 北九州の地震 活動期のだめ押し

 2005年3月20日は彼岸の中日であった。休みの日でも毎日のように出かけなければならない仕事であるが、福岡県沖に地震が起こったときにはまだ家にいた。北九州に、しかも福岡の沖にマグニチュード7クラスの大規模地震というので驚いた。

 連休に大地震があるような気がしないでもないが、日本の現行暦である太陽暦(グレゴリオ暦)と日本列島の地震発生が深く関係するわけではないと思う。福岡で地震と聞くとまずは九州大学の地震学の教授である鈴木貞臣さんを思い浮かべるが、鈴木先生は今年ご停年で3月31日にご退職のはずなので、研究室の整理に忙しかったりするだろうと、電話をかけて聞くわけにもいかないと思った。あちこちに取材していると、鈴木先生は地震のとき九州大学の近くを車で走っていて、一瞬パンクだと思ってしばらく徐行し、ラジオで地震と知ったということがわかった。ネットワークで今はこんなことまでわかるということに、あらためて感心した。

 しばらくすると福岡県沖に並ぶ余震の様子が判明し、その並びから福岡にある活断層で有名な警固断層の延長上の岩盤が破壊して、大規模地震を起こしたのだということもわかってきた。地震は岩盤の破壊で起こるが、浅い大地震では、その破壊面の近くでさらに小さい破壊が続けて起こるので、それが余震になってしばらく続く。とくに本震の直後には大きな余震も含めてどんどん起こるから、余震の並び方から本震の破壊面の位置や形がわかるのである。

 ネットワークでは気象庁の情報も読める。この地震のときの気象庁の最初の地震情報は、地震発生から6分ほど後、10時59分に発表され、「震源地は福岡県西方沖(北緯33・9度、東経130・2度)で震源の深さはごく浅く、地震の規模(マグニチュード)は7・0と推定されます」として、震度3以上が観測された地域が並び、最大の震度は、震度6弱(福岡県福岡、佐賀県南部)、震度5強が福岡県筑豊、福岡県筑後、佐賀県北部だと分かった。続いて、震度5弱以上が観測された市町村が発表され、震度6弱は、前原市みやき町、震度5強が福岡中央区、春日市須恵町などだった。最後に1行、「現在津波予報が発表されています」とあって、さすがに行政の情報は急がなければならない津波予報であっても担当が異なると地震情報では内容を言わないのだと感心した。

 そこで問題になるのは、その後に起こったマグニチュード4クラスの小規模な地震の地震情報であっても、その最後に「現在津波予報が発表されています」とだけの1行が付いていたことである。こんな小さい地震ではいつものように「津波の心配はありません」のはずだが、このときには本震による津波予報が、確かに出ていたのである。

 変動帯にできた列島全域で地震活動が活発な日本では、福岡県は比較的静かな地域であるが、こんなところにまで大地震が起こるということは、西日本の地震活動期が続いている証拠であり、その活動期の最後の方で起こる南海大地震に向かって、その発生確率が上がっているという、だめ押しの証拠でもある。南海地震までにもっとくわしく、もっと市民に親切な地震と津波の情報を提供する仕組みが、国にもメディアにもぜひ実現してほしいと願っている。  

2005年4月3日付朝刊掲載

 ※筆者の了解を得てホームページにも掲載しています。

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