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南海地震

―― 視点 京都大学長 尾池和夫(地震学) ――

 インド洋の津波 巨大地震の姿を知る

 2004年は、インド洋の沿岸をおそった大津波による被害のニュースで年末を迎えることになった。大津波を起こした地震は、多くのメディアでスマトラ沖地震と呼ばれているが、震源の点、つまり破壊の始まりの点はスマトラ島沖であっても、地震断層面の破壊は、その震源から北へアンダマン諸島に沿って、はるか1000キロ近く走った。だから、ベンガル湾東岸地震、あるいはアンダマン諸島沖地震と呼ぶ方がいい。

 インド洋とアンダマン海を分けるアンダマン・ニコバル諸島は、南北に弓なりに並ぶ諸島で、北はミャンマーのある半島へ、南はスンダ列島の北端、スマトラ島の端へとつながる弧状列島である。

 この列島は、きっと今回と同じような巨大地震と大津波を繰り返し発生させながら沈み込むインド洋プレートの運動で形成されてきたと思われる。

 地球儀を持ってきて、日本列島を真正面からディジタルカメラで撮し、ほぼ90度時計回りに画像を回転させ、つぎにインドネシアを中心に、同じ倍率で真正面から撮した写真とを並べてみると、実によく似た形に見えるであろう。北海道とジャワ島を並べ、スマトラ島と西南日本を並べると、琉球の諸島が今回地震の起こったアンダマン・ニコバル諸島の位置に来る。そしてそれぞれが弓なりに曲がる弧状列島になっている。

 海洋プレートが陸のプレートに出合って沈み込むと、ちょうどピンポン玉を指先でへこませたときのように、円弧状の沈み込み境界ができる。その陸側には島が隆起して、弧状に並ぶ。逆に言えば、弧状列島の存在は、長い時間をかけて続いている海洋プレートの沈み込みが、その弧状列島のすぐ沖にあるということである。

 今回、一挙に1000キロ近くにわたって沈み込み運動が起こったアンダマン・ニコバル諸島の沖から、インドネシアのスマトラ、ジャワ、バリ、東チモールにかけての大規模な弧状列島は、インド・オーストラリアプレートの沈み込みによってできた構造で、インド洋に面した唯一の弧状列島である。スマトラから東チモールまでの地域には、津波を起こした大地震の記録がたくさんあったが、今回動いた部分にはなかった。長い間動かずに頑張っていたのだろうか。弧状列島は太平洋に面してたくさんあり、日本列島の弧状の並びもそのような海洋プレートの沈み込みによってできている。千島列島、東北日本から琉球、あるいは伊豆からグアムへ向かう諸島などが、みな同じ仕組みで形成された。

 日本列島は「花綵(かさい)列島」と呼ばれる。円弧状または弓形に配列され、花づなのような形をなしている列島と、広辞苑にある。一方、インドネシアは「エメラルドの首飾り」と呼ばれている。約1万3000と言われる島々からなるこの国は緑にあふれている。日本と同じように美しい自然を持っている。

 昨年7月、インドネシアのバンドン工科大学を訪ねて、クスマヤント学長とさまざまな話をした。両大学が交流協定を結んで、共通に変動帯を特徴とする文化を大切にし、自然災害から人々を守る研究も進めなければならないと、かたい握手を交わしたときのことを、今ありありと思い出している。  

2005年1月16日付朝刊掲載

 ※筆者の了解を得てホームページにも掲載しています。

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