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南海地震

―― 視点 京都大学長 尾池和夫(地震学) ――

 南海地震の歴史 世界一詳しい史科

 山内一豊から数えて18代目の山内家の当主であった山内豊秋さんは、2003年9月29日に91歳で亡くなった。告別式で喪主をつとめた豊功(とよこと)さんは、私と同年の生まれである。私は第六小学校に通ったころ、高知市鷹匠町の山内家の長屋に祖父母と3人で住んでいた。そのとき、豊功さんは広大な敷地の中の、塀に囲まれた大きな屋敷の中に住んでいて、別世界の人であった。

 私の家の隣には郷土史家の平尾道雄さんが住んでいた。古い本が高く平積みにされ、お灸(きゅう)のツボを描いた人体模型があったりする部屋の中で、平尾さんはいつも書物に向かっていた。山内豊秋さんは、この平尾さんの教えも受けて、山内家を中心とする土佐の歴史を研究し、平尾道雄さんらが編修した土佐藩史「山内家史料」を刊行した。山内一豊は静岡県の掛川から土佐へ渡った。「掛川から土佐へ」という本を豊秋さんが著した。また、1万点余りの史料を県へ寄贈した。長曽我部地検帳や坂本龍馬の手紙なども含まれているという。

 参勤交代の道は、大豊町立川から県境の笹ケ峰を越えて、愛媛県新宮村を経て川之江市へ行く。豊秋さんはその道を、1983年に、山内容堂以来120年ぶりに歩いてみて、沿道の人びとに歓迎されたという。

 山内家が土佐藩を治めた江戸幕府の時代は、1603年から1867年まで続いた。その間に3回の南海トラフの活動があった。ときには江戸の大地震や富士山の噴火もともなって幕府の政治に影響した。

 山内家は1584年から85年まで滋賀県長浜市で5000石の領主だった。短い期間、若狭高浜へ行った後、また長浜で1590年までいた。1586(天正13)年の地震が起こり、一豊の娘、与禰姫が震災で圧死した。この地震を起こした震源断層はまだよくわかっていない。秀吉はこの地震を体験したので、伏見の城を建てるときに地震に気をつけるようにと手紙を書いたが、1596年の大地震で、その伏見城の天守閣が倒壊した。

 その後、1605年、南海トラフのプレート境界に巨大地震が起こった。慶長の南海地震で土佐にも被害があった。このときには東の相模トラフも同時に動いた可能性があると言われている。これらの一連の地震は西日本の地震活動期の地震である。

 西日本には、その後の静穏期を経て、1707年、1854年、1944年と46年に、それぞれ南海地震をともなう巨大地震が起こった地震活動期があった。江戸幕府以前にさかのぼると、1498年の巨大地震がある。古文書の分析からは東海沖の地震だけが認識されているが、遺跡調査からは南海地震もあったようである。その前は、1360年東海地震と1361年南海地震、さらに1096年東海沖地震と1099年南海地震、その前は、887年の南海地震である。古文書で確認される最古の南海地震は684年である。東海地震も起こったかどうかは、はっきりしていない。寒川旭さんによれば、考古学の遺跡から推定すると、まだ他にもあって、時系列の隙間(すきま)を埋める巨大地震が見つかるかもしれないという。

 

2004年5月16日付朝刊掲載

 ※筆者の了解を得てホームページにも掲載しています。

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