津波への対策 避難場所と警報の整備を
21世紀の前半に想定される東南海地震と南海地震では、西日本の南側の地域で強震動が予想されるが、同時に大津波がおそってくることも想定される。朝日新聞社は自治体にアンケートして、大津波への対応を調べた。その回答を分析した記事(2000年1月15日)によると、多くの自治体がさまざまな形で問題をかかえていることがわかる。沿岸部自治体の避難訓練実施率は、静岡、三重、和歌山、高知各県で100%と高い。また、いくつかの町では、津波に備えて、絶壁の階段、避難タワー、人工地盤、高台への通路、防災無線などが整備されていることもわかる。
和歌山県の白浜には、京都大学の施設もある。フィールド科学教育研究センターの瀬戸臨海実験所や防災研究所の白浜海象観測所である。これらの施設でも、もちろん津波や強震動に対する備えをしておかなければならない。海岸にある白浜署では、津波の高さを4メートルとすると、3階建てのビルの1階部分が完全に水没するという。地震動が始まってから津波が来るまでの時間は、ここの場合約17分であり、標高100メートルの安全な所にある白浜空港の派出所までは徒歩で30分かかるという。
朝日新聞の調査では、防災対策推進地域の沿岸にある自治体のうち、津波で浸水の恐れのある市役所や役場は少なくとも25にのぼっているという。
高知では、桂浜の対岸の種崎は、太平洋に面して海水浴場があり、私も高知にいたときにはときどき遊びに行ったことを覚えている。もちろんそのころとはずいぶん景色が変わったが、基本的に津波が来る場所であることには変わりはない。浦戸湾に面して港があり、今では桂浜へ渡る橋もある。南海地震による強震動から津波の到着まで30分ほどで、その間に高台に逃げないといけないが、そのためには高いビルなどを建設しておかなければならない。高知市内でも最も津波に対して危ない地域だと言われている。ここで予想される津波の高さは8メートルである。
津波の被害を避けるためには、警報が重要である。一般的に、実際に現象が起こってから、すぐにそれを物理的にとらえて、すばやく分析することによって、そこから伝わってくる現象を予測すると、精度の高い予測ができることが多い。それは地震についても同じである。大地震が発生すると地震波が伝わってきて地表が揺れる。その地表の強震動を地震発生後ただちに予測して、地震波の到着よりも先に、高速で動いている電車を止めたり、ガスを止めたりすればかなり事故が防げる。とくに津波は、地震波よりかなりゆっくり伝わってくるから、そのような予測による警報で、安全な高台まで逃げることができる時間的な余裕がある。
また、高知県の沖では、南海地震に備えてブイを設置し、GPSを利用してブイの動きを検出し、震源の近くで発生した津波を判断して警報を出すという実験も期待される。台風もやってくるような荒海で実験が成功すれば、世界の海で使えるようになり、遠方のチリから太平洋を渡ってやってくる津波の警報にも使える。
(2004年3月7日付朝刊掲載)
※筆者の了解を得てホームページにも掲載しています。