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南海地震

―― 視点 京都大学長 尾池和夫(地震学) ――

 須崎市の防災活動 ふれあい高新の行事から

 2003年10月30日から11月3日まで、高知新聞社は「第10回移動高知新聞 ふれあい高新」を須崎市で開催した。高知の人たちには「須崎といえば鍋焼きラーメン」というので知られる須崎市である。この行事の中で、南海地震に備えるということも大きなテーマの一つになっていた。

 31日の昼には、高知大学の岡村真教授が、須崎市の南地区住民とこの地域を歩いて、防災の体制を実地に点検するという行事が行われた。高知県には防災教育モデル校がある。須崎市の南中学校もそのモデル校で、中学生たちが実地点検に参加し、保護者や前回の南海地震を体験したお年寄りたちと一緒に歩きながら岡村教授の話を聞いた。歩いたルートには、昭和の南海地震の「震災復旧記念碑」も防波堤に沿って立っている。

 31日には、東洋の魔女たちもこの「ふれあい高新」に参加するために高知へ来た。1964年の東京オリンピックで金メダルに輝いた女子バレーボールの選手たちである。その日、追いかけるように私も高知空港へ着いて、同じ日の夜、須崎市民文化会館で「次の南海地震に備える」という題で講演した。

 さらに11月1日には、土佐民話の会主宰の市原麟一郎さんが、地震や津波の恐ろしさと、災害に備えることの大切さとを、紙芝居で語って聞かせた。

 31日夜の私の講演には、月末で週末の夜であるにもかかわらず、たくさんの参加者があった。私はそこで、地震の仕組みと、予測される高知と西日本の21世紀前半の地震活動の特徴を話した。これからも西日本のいくつかの活断層が動いて、都市直下の大規模地震を起こすであろう。その後、2030年から40年ころには西日本の地震活動期のピークとして、南海トラフに沿うプレート境界の巨大地震が起こる。それが次の南海地震であり、マグニチュード8クラスの巨大地震になる。高知県のすぐ北には中央構造線活断層があり、南にはフィリピン海プレートが潜り込むプレート境界がある。それらの活動に備えて震災の軽減をはからなければならない。

 須崎市は、1995年5月31日に「南海・チリ―地震津波録、海からの警告」という152ページの単行本を発行した。まず口絵の9ページにおよぶモノクロ写真が、津波の跡をありありと見せてくれる。第1章は「海からの警告」で、津波を体験した多くの方たちが、生の声でその体験を語る。「増刷発刊にあたって」という序文を寄稿した須崎市長、梅原一さんは「本書が、須崎湾に建設中の津波防波堤とともに、必ず起こり来る次の地震津波から皆さんを守る一助になるよう活用されることを期待します」と述べている。

 第2章は「須崎の地震津波」、第3章は「津波の解説」で、これらは、徳島大学工学部教授の村上仁士さんが書いた。

 須崎市の津波の痕跡は、史実から学ぶために専門家もたびたび訪れる。例えば、1997年から始まった「東海・東南海・南海地震津波研究会」は、第10回研究会(現地調査)で、1999年に徳島県海南町から高知県須崎市を訪れた。海南町、宍喰町、夜須町、香我美町、土佐市宇佐町、須崎市というルートで津波の跡を見学し、須崎市では須崎港津波防波堤を訪ねている。

 

2003年12月21日付朝刊掲載

 ※筆者の了解を得てホームページにも掲載しています。

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