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南海地震

―― 視点 京都大学教授 尾池和夫(地震学) ――

 中山間地の震災対策 居住の安心を大切に

 第2回居住福祉推進フォーラムという集まりが2003年5月11日に高知会館で開催され、私も参加した。早川和男さんの基調講演「21世紀の課題・居住福祉」を聞いた。早川さんは日本居住福祉学会の会長で、安心して生きるのは人の基本的な権利であるという考えで、この学会は2001年に設立された。

 基調講演では、安全に安心して住むということは、生きること、暮らすことの基盤であるという観点から、さまざまの話題が提供された。日本では地震と震災と居住は切り離せない問題であり、かならずおそってくる南海地震がある以上、このフォーラムを高知で開催するのが適していると考えたという。

 早川さんは阪神大震災を経験した。この震災のときの死者のうち、家の倒壊による死者が88%、火災による死者が10%だったという。このことから、古い家に住み続けて行われる「在宅福祉」などの問題が提起された。また、震災が発生した後で作られた神戸の仮設住宅の多くが、不便な場所にあったことなども紹介され、住むということの大切さを考えなければならないと述べられた。

 パネルディスカッション「中山間地・すまいとくらし・居住福祉の展開」に、パネリストとして私も参加した。この日、雨の中であったが、150名ほどの参加者があった。村田幸子さんの司会で議論が進められた。「21世紀の大きな課題として住まいの安心、居住の安心がないということが浮かび上がってきたと考えています」という司会の出だしであった。

 まず、高知県の中山間地とはどのようなものかを橋本大二郎さんが説明した。5つの関連法律があり、その対象になるのが「中山間地」という定義で、それには海沿いの地域も含まれる。高知県には53の市町村があり、4つを除いて中山間地がある。

 人口の40%あまりが面積2%の高知市に集中し、その裏返しが中山間地で、そこには過疎と高齢化から起きる問題があるという。

 高知県政策総合研究所の谷本信さん、徳島県相生町日野谷診療所の濱田邦美さんの話に続いて、私は3つのことを話した。第1は、高知に起こる震災に、南海トラフの巨大地震と大津波によるもの、中央構造線活断層の地震による強震動で起こるもの、中規模地震によるものがあるということ。第2は、南海地震はかならず起こる巨大地震だということ。「中山間地」に海辺や離島が含まれるのであれば、南海地震津波も「中山間地」にとって大変な課題になる。第3に、日本は変動帯にある国だということを強調した。山、里、平野、海辺があるのが特徴で、高知市に集中した40%の人が、上流の人びとを支えるのは当然だという考えが必要だと思う。高知県には、森林率が全国一という特徴がある。雨を貯め水を供給する。これは21世紀の国民的課題にかかわる特徴であろう。

 村田さんは、鳥取県西部地震の経験から震災によって住民がいなくなる恐ろしさを指摘した。鳥取県では人が離れないためにさまざまの支援を考えた。中山間地には高齢化の現象はあるが、元気なお年寄りが多い。その人たちが元気でない高齢者を支える仕組みが必要なのだという議論が、この日、私の印象に残った。  

2003年7月20日付朝刊掲載

 ※筆者の了解を得てホームページにも掲載しています。

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