地震の被害想定について シナリオをもとに算出
今年の4月17日、中央防災会議の専門調査会が、次の東南海・南海地震による被害想定をまとめて発表した。その日は、読売テレビで「月刊地震ファイル」という定期のニュースが夕方放送されることになっていて、この被害想定もそのニュースの大きなテーマになっていた。この放送は、毎月17日に過去1カ月の地震の活動状況を解説し、また地震に関する話題を紹介するコーナーで、私もかならずコメントすることになっている。
また、毎日放送でも同じニュースを取り上げた。こちらでは、私が「もし地震が起こったらという被害想定ではなく、必ず起こることがわかっている地震の被害想定です」とコメントした。また「その前に都市部を襲う内陸の活断層性の地震の方が怖いのです」と念を押した。同じ17日の夜は朝日新聞大阪本社で、朝日関西スクエアのメンバーにこの被害想定の持つ意義を話した。その内容は翌朝の朝刊にコメントとして載った。
一般に、地震の被害想定にはシナリオになる地震がある。もしこの地震が起こったら、というシナリオをもとにして被害を算出する。しかし、今回発表されたこの被害想定には、いくつかの大きな特徴があって、まず第1の特徴が、「もし起こったら」ではなく「かならず起こる」地震がシナリオになっている点である。今すぐではないが、今から30年から40年ぐらいたったころには、間違いなく起こるという、しかも巨大地震である。
第2の特徴は、東南海地震と南海地震という二つの地震による死者の数などの被害想定が、都道府県別に初めて発表されたことである。
発生する地震を予測するためには、発生する地震の仕組みと地下の深い所の構造がわかっていないといけない。南海トラフで起こる巨大地震の震源断層の仕組みと周辺の構造がわかってきたので、地震がどのように発生して、そこから生まれた地震の波がどう伝わるかということが計算できるようになった。
どれだけ揺れるかは足元の地盤の構造がわからないと予測できないが、調査が進んで大都市のある平野部の地下構造がわかってきた。さらに、被害を予測するためには、社会状況のデータが必要であるが、これらがかなりそろってきた。
これからの課題がまだまだある。今回の都道府県別の発表によって、被害が少ないと発表された地域が安心してしまうようになると困る。また、被害が大きいと予測されていても、国が発表したのだから、都道府県としては、予測の仕事はもうしなくてもよいという認識があると困る。県全体としては被害想定が出ているのだが、さらに市町村ごとや地区ごとに細かくデータを出す必要がある。それがあって初めて自治体の認識が深まり、住民の意識も高まってくる。
さらに中央構造線から北は活断層帯で、それらが活動中である。南海地震までにいくつかの内陸地震が先に起こる可能性が高い。活断層帯がほとんど足下にない高知県はいいとしても、京阪神の活断層帯が忘れられると困る。もっとも高知県でも北の中央構造線が動くと山間部の斜面などに大きな被害が出る。
(2003年5月4日付朝刊掲載)
※筆者の了解を得てホームページにも掲載しています。