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南海地震

―― 視点 京都大学教授 尾池和夫(地震学) ――

 東南海・南海地震対策特別措置法 具体的な備え始める時

 5月12日の読売テレビのシンポジウムの後、和歌山県知事の木村良樹さんたちの行動はすばやかった。5月17日には与党3党の幹事長に要請し、それを受けて保守党が「東南海・南海地震対策特別措置法案骨子」をまとめた。

 6月13日には与党のプロジェクトがスタートし、19日には法案が衆議院に提出された。法案の審議も速かった。衆議院の災害対策特別委員会を経て、7月16日には衆議院に緊急上程された。

 この秋に出版するつもりの本の序文を考えている最中に、保守党の幹事長、二階俊博さんから私の研究室に電話があって、議員立法で提出されていた法案が可決される見通しだといわれた。

 「地震に関する観測・測量のための施設等の早急な整備を図るとともに、東南海・南海地震における地震予知の重要性に鑑(かんが)み、予知に資する科学的な技術水準の向上に努めること」

 という内容が付帯決議に入れられることになったということも教えてくれた。この付帯決議は、大学などの基礎研究としても、かならず起こる巨大地震を観測するまたとない機会を活(い)かすためにも重要である。

 その後、7月19日には、シンポジウムの企画からずっとこの問題を担当してきた読売テレビ報道局の山根順さんから「本日午前、参議院本会議において、全会一致で東南海・南海地震対策特別措置法が可決成立しました。成立後の会見で保守党の二階幹事長は、『京大をはじめ、地震専門の研究室から、大変なご声援、ご意見を頂戴したこともありがたく思っています』と発言されました。取り急ぎ、ご連絡まで」という電子メールが来た。

 山根さんたちは、ずっと地震情報の報道を続けている。震災を軽減するためにという願いで、市民やマスメディアの方々をはじめ、皆さんが懸命に働いているのを見ると、地震学者も頑張らなければと思った。

 法律には「国は、推進地域における地震防災対策の推進のために必要な財政上及び金融上の配慮をするものとする」とある。この法律が施行されると、当然ながら次の南海地震に対する高知県での防災対策も進むことになるはずである。

 以前、高知のテレビ番組で南海地震についての私の解説に対して、高知県知事の橋本大二郎さんは、県の力だけではなかなか進まないので「尾池先生にも国に対して発言してもらって…」というような意味のことを述べられたのをよく覚えている。

 そのときは「人ごとみたいな言い方」とは思ったが、私も何とか法律ができるところまで働きかけてきたので、こんどこそ、高知県民のために、かならず来る南海地震に対する備えを具体的に始めるよう、県外に潜在する高知県民の一人として、あらためて橋本知事にお願いしたい。

 いうまでもなく備えなしに巨大地震の発生を迎えれば、そのときの被害はそれだけ大きくなる。ほとんど備えのなかったであろう終戦直後に起こった南海地震では、激しい強震動に続いて、高知、徳島、和歌山、三重などの沿岸を、高さ4〜6メートルの津波が襲い、死者1330人、全壊2348という被害があった。

2002年9月1日付朝刊掲載

 ※筆者の了解を得てホームページにも掲載しています。

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