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南海地震

―― 視点 京都大学教授 尾池和夫(地震学) ――

 「激震が襲う日」シンポから 活断層性地震にも注意を

 日本で最初に地震のカタログを編集したのは菅原道真である。それ以来、地震による被害がさまざまな形で古文書に書き残されている。南海トラフの巨大地震の記述は早くも7世紀に見られ、今までに9回知られている。

 1995年兵庫県南部地震のあと、地震予知連絡会の茂木清夫会長をはじめ、多くの地震学者たちが、西日本は地震活動期に入ったと解説した。西日本の一定の地域に限って見ると、地震活動期と静穏期があるということが知られているからである。

 その現象は歴史地震資料によって確認される。

 日本全体では、100年以上の期間で見ても、地震の活動期や静穏期は見られないが、西日本の一部である京阪神などの地域に限ると、地震の活動期が見られる。歴史地震のデータをもとに、巨大地震の発生前後に、ある地域で地震活動が集中して発生することがあるということが指摘されたのは、1970年ごろのことだ。南海トラフの巨大地震を含む日本のいくつかの巨大地震について、その発生前の数年から数十年間に巨大地震の震源域で地震活動が低下し、かつ周辺地域では地震活動が高まるという現象があることがわかった。この現象は、地震の分布図の形から、ドーナツパターンと呼ばれた。南海地震を囲むように北側の内陸部に、半分のドーナツではあるが、西日本にも巨大地震の前にこのパターンが発生する。

 京都とその周辺地域の過去の地震の発生を調べると、南海トラフの巨大地震の前の数十年間に、地震の発生が集中する傾向がある。南海トラフの地震前後とそれ以外の期間とを比べると、南海トラフの巨大地震の前50年間と、巨大地震の後10年間に発生したM(マグニチュード)6.5以上の被害地震の発生率は、それ以外の期間の地震の発生率の約4倍も高い。また、活動期の長さは、南海トラフの巨大地震の時間間隔に関係なく、次の南海地震の約50年前から多くなる。つまり、南海地震の発生時間間隔が長いときには、内陸地震の静穏期が長くなる。

 今年5月12日(日曜日)、大阪・読売テレビ主催の「激震が襲う日」というシンポジウムが大阪で開かれ、内閣府の奥山防災担当政務官らとともに、私も防災の専門家として出席、さらに木村和歌山県知事、太田大阪府知事、貝原前兵庫県知事も参加。会場には数百人の市民が詰めかけた。そこでも、南海地震とその前に起こる内陸地震の仕組みを話した。シンポジウムの内容は2時間半に編集されて後日放送された。

 活断層運動で大地の隆起と沈降があるからこそ、平野や盆地ができて、そこに大きな都市が生まれた。これが近畿の地形の特徴である。だから南海地震がやがて起こるが、その前に近畿の知事さんたちのいる、いずれかの街の直下に活断層性の地震があるということになる。貝原さんの所は、もう起こって済んだ。

 高知市の直下には活断層はないが、高知県の北に接して中央構造線の活断層がある。そしてまた、南海地震は確実に起こる。高知県はもちろん、広域の知事さんたちが情報を共有しつつ国にも働きかけて、西日本の地震活動期に備えてほしいというのが、その放送に参加した私の願いであった。

2002年6月16日付朝刊掲載

 ※筆者の了解を得てホームページにも掲載しています。

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