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昭和南海地震半日前に前兆 漁師の証言収集
07年11月01日付朝刊
「海が異常に引いた」「宇佐沖が濁っていた」――。土佐市宇佐町宇佐の旭町地区自主防災組織会長の中村不二夫さん(64)が、地元漁師らから昭和南海地震発生前の証言を集めている。これまでの聞き取り調査で、地震発生の半日程度前から井戸枯れや海水の汚濁などの前兆とみられる現象があったことが判明。中村さんは「証言に基づけば、発生までに避難する余裕が十一時間はある。次の南海地震対策に生かせるのではないか」と話している。
昭和南海地震は、昭和二十一年十二月二十一日午前四時すぎに発生。マグニチュード(M)8・0で、本県沿岸部は震度5から6で激しく揺れ五メートル前後の津波が襲った。
地震発生前の状況を調べようと思い立ったのは三年前の冬。中村さんは病院の患者送迎バスの運転手をしており、乗客に昭和南海地震の前に「海水に濁りがあった」と聞かされた。これをきっかけに調査をスタート。宇佐や須崎市浦ノ内などの七十―八十代の地元漁師ら約二十人からこつこつ証言を収集した。
中村さんのまとめによると、地震発生約十二時間前、前日の午後四時ごろまでは異常なかったが、同五時以降さまざまな異変を確認。井戸の水位が五メートル以上下がったり、大潮の干潮時でも三―四メートルあるはずの潮位が一・五メートル程度に下がったという。また悪臭やヘドロの発生など、沖合の海水が著しく汚れていたことも複数の漁師が証言している。
原因については、地震発生前、地面の隆起に伴い潮位は低下。その際、海底の岩盤がずれて海水汚濁も発生したのではないかと仮説を立てている。調査内容は冊子や書籍などにまとめる考えという。
こうした聞き取り調査は、当時の運輸省水路部なども実施し、報告書を作っており、今も研究者の貴重な資料。それだけに新たな証言集としての価値もありそうで、県危機管理課は「過去の証言を調べて伝えることは大変意義がある。さまざまな視点で研究が進み、地震予知につながることを期待したい」と“応援”している。中村さんは「前兆を観測していれば次の南海地震は予測できる。今後は調査対象を県外に広げたい」と意欲をみなぎらせている。
【写真】地震発生前に漁船が座礁した宇佐漁港。中村さんの調査によると水位が下がり1.5メートルほどになっていた(土佐市宇佐町宇佐)
中村さんが集めた証言 (時間は推定も含む)
昭和21年12月20日午後4時、宇佐漁港
「特に潮の異常は感じなかった」
5時、新居地区
「井戸水をくみに行ったが空になっていた。ロープをいつもより5メートル伸ばしたが、くめなかった」
同時、同漁港
「普段より潮が相当引いていたが出港した。ところが(引き潮が強く)ものすごい速度で自分の船が走っているのに気付いた」
6時、宇佐沖合
「普段は300―500キロほど釣れていたサバが1匹も釣れない」
「海水からワカメが腐ったようなにおいがした」
「漁具にドロドロした汚れが付着して困った」
8時、同漁港
「引き潮が速くやっとの思いで漁から戻ってきた」
21日午前0時、同漁港
「船が座った(座礁した)。そこはいつもの停泊地で一度もそんなことはなかったのに」
1時、同沖合
「海が異常に引いていた。いつもの航路なのに船底が海底にガツガツと当たった」
2時、宇佐地区
「漁から帰り、手を洗おうと思ったら井戸水が枯れていた」
同時、須崎市浦ノ内地区
「ウルメ漁に行くため起きたが、母が『井戸に水がない』と言い、海を見に行った父は『おかしいぞ、海が干上がっている』と話していた」
3時半、同地区
「南方の空が真っ赤に焼けて夕焼けを見ているようだった」
4時すぎ、宇佐地区
「揺れで目が覚め井戸水を見に行ったら枯れていた。言い伝えを思い出し、津波が来ると思って周囲に大声で避難を呼び掛けた」