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「犬神家の一族」

 時代がなくした現実性

30年ぶりにリメークされた「犬神家の一族」の1シーン

 同じ監督が同じ主演俳優で、30年前に撮った名作映画をリメークした。御年九91歳、市川崑監督の長寿がなせる業だが、再現ドラマと言ってもいいほど“そのまんま”につくられている。

 終戦直後、信州財界の大物だった犬神佐兵衛が死に、遺言状をめぐって奇怪な殺人が起こる。探偵の金田一耕助(石坂浩二)が呼ばれ、真相を突き止めることに―。

 1970年代後半、市川崑と石坂浩二のコンビで映画シリーズ化された横溝正史ミステリー。第一作の「犬神家―」は大ヒットし、市川崑の職人的な凝ったつくりが、後の映像作家たちに多大な影響を与えたとされる。

 すべてが耽美(たんび)でおどろおどろしかった。菊人形の生首や、湖に逆さに突っ立った二本脚…。リメーク版でも“そのまんま”出てくるが、何かゾッとしない。

 旧作は何度見ても強烈なのに。同じように撮っても感動を同じくは再現できない、という事実に尽きるのだろう。

 ただ、こうも思った。戦場で顔を焼かれた男が復員し、誰かとすり替わって別の人生を送る―。この「犬神家―」の設定は、旧作が制作された1970年代、戦争を経験した世代がまだまだ現役だったころには、ゾッとするリアリティーがあったのではないか。

 けれど戦後61年を経て、犬神家の人々を縛り付けている旧弊な家族制度も、戦争の悲劇も遠いものになった。今の観客にとって、忍従するヒロイン珠世は感情移入できる対象ではない。

 ところが、松嶋菜々子は現代ドラマと同じように珠世を演じている。対して、母子共演の富司純子と尾上菊之助は“大芝居”といった感じでみせる。怖さよりも、それらのアンサンブルのずれが気になってしまうのだ。

 【写真説明】30年ぶりにリメークされた「犬神家の一族」の1シーン

(06年12月27日・田村文)

 →TOHOシネマズ高知
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