2017.05.19 14:30

人生フルーツ

「人生フルーツ」の一場面(c)東海テレビ放送
「人生フルーツ」の一場面(c)東海テレビ放送
小さな自然を資本に 老夫婦の静かな生活 人生後半の生き方

 ああもう僕も50歳かあ。そんな覚悟をもって迎えた先月の誕生日だったが、ふと年齢早見表で確かめてみれば、まだ49歳だった。まあそれにしても、人生後半の生き方というものを考え始めた。

 そうした心境にあって、本作「人生フルーツ」は大いなるヒントを与えてくれる素晴らしいドキュメンタリー映画である。

 津端修一さん(90)と津端英子さん(87)の日常を淡々と丁寧に追っていく。修一さんは建築家として、大規模なニュータウンの設計を主導した。まだニュータウンというものが黎明(れいめい)期のころである。計画は修一さんの設計思想とは反して、経済的合理性が優先された宅地開発となってしまう。

 人生後半。なんと修一さんはこのニュータウンの一角にある土地を買うのだ。修一さんの決意を込めた静かな反骨だ。平屋の家を建て、そばに雑木林と畑をしつらえた。時の積み重ねが木々を育み、四季の巡りから野菜や果実の収穫がある。

 広大な敷地であるはずがない。ここはニュータウンなのである。けれどその小さな自然も資本とする暮らしは、なんて豊かなのだろう。小さな畑から、たくさんのジャガイモが取れる。英子さんが作るコロッケのおいしそうなこと。

 小さな自然には小鳥たちもやってきて、愛らしい姿と鳴き声も生活にもたらされる。夫婦はそんな生活を愛(いと)おしみながら、そしてゆっくり老いてゆく。

 高知には大きな自然がある。持て余してしまうようなサイズだろう。この自然資本をどんなふうに運用し、そして楽しみながら、津端さんたちのように老いていくことができるだろう。人生後半、映画を見て考え込む。

 高知県内3カ所で上映がある。5月21日=窪川四万十会館、6月2日=高知県立美術館ホール・中庭、6月4日=安芸市「すまいるあき」。問い合わせは四万十会館(0880・22・4777)、高知・安芸はシネマ四国(088・855・9481)へ。

     (竹内 一)

カテゴリー: シネスポット文化


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