2017.05.13 08:25

【「共謀罪」】採決の強行は許されない

 「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ組織犯罪処罰法改正案が5月18日にも衆院で採決され、通過する可能性が出てきた。
 衆院は自民、公明の与党両党が議席の3分の2を、参院も過半数を占める。法案は成立に向け、大きなヤマ場を迎えることになりそうだ。
 これを前に、両党と日本維新の会は法案を一部修正することで合意した。恣意(しい)的な捜査を防ぐためとする維新の提案を取り入れる。
 付則に、取り調べの可視化や衛星利用測位システム(GPS)の捜査活用を検討することを明記。本則には捜査の「適正の確保に十分配慮しなければならない」などの文言を加えるという。
 だが、法案は依然乱用の恐れが拭えず、多くの野党が反対している。維新との修正の効果も疑問だ。早期成立を目指す政府与党が、採決の際に強行との批判をかわしたいからではないのか。
 国民の不安は根強く、衆院の審議も不十分な現状で採決に踏み切れば維新が賛成しても実質的に強行採決と変わらない。それは許されることではない。
 共謀罪は、謀議に加わるだけで処罰できるようになる。過去3度国会に法案が提出されたが、いずれも廃案に追い込まれている。
 実行された犯罪を処罰する日本の刑法原則を覆すものであり、思想信条などの弾圧につながった戦前の治安維持法も想起される。廃案になってきたのは当然であろう。
 政府はもともと、共謀罪を設ける根拠として、薬物犯罪やマネーロンダリング(資金洗浄)などを防止する国際組織犯罪防止条約の存在を挙げてきた。
 今回も同様だが、名称は「テロ等準備罪」に変更し、東京五輪・パラリンピックを控えてのテロ対策での必要性を強調している。テロ対策は条約の主目的から外れており、国民の批判を意識したカムフラージュと勘繰られても仕方があるまい。
 適用は「組織的犯罪集団」に限定し、犯罪の成立条件として資金や物資を用意するなどの「準備行為」を求めているが、組織的犯罪集団の定義は曖昧なままだ。準備行為も日常行為との区別が難しい。
 修正案も疑問点が多い。可視化を付則に入れたとしても検討する程度では乱用防止の効果は限られよう。
 そもそも共謀罪の懸念は逮捕前の方が大きい。犯罪の恣意的解釈や、通信傍受の拡大などの監視社会につながりかねないからだ。GPS利用の制度化はさらにそれを助長しないか。本則に明記する捜査の「適正の確保」も具体性に欠ける。
 第2次安倍政権の発足以降、政府与党は、数の論理で特定秘密保護法や安全保障関連法など国民の人権や生命に重大な影響を及ぼす法制度を強引に成立させてきた。
 安倍首相は最近、憲法9条の改正にも前のめりになっている。共謀罪での暴挙を許しては、危うい政治の流れが一層加速しかねない。
カテゴリー: 社説


ページトップへ