2017.04.28 14:50

高知県がレッドリスト改訂案 アカメが「絶滅危惧種」から除外

レッドリストから外れたアカメ(2002年の県レッドデータブックより)
レッドリストから外れたアカメ(2002年の県レッドデータブックより)
 絶滅の恐れがある生物を生息状況別にまとめた「高知県レッドデータブック」(RDB、2002年発行)の内容を見直すため、高知県は4月28日、レッドリストの動物編の改訂案を公表した。絶滅危惧種だった日本固有の魚「アカメ」を「高知県内の岸沿いと内湾に広く分布する」としてリストから除外して「普通種」とし、タガメなど昆虫3種を新たに絶滅種に追加した。

タガメは絶滅種に追加された(2002年の高知県レッドデータブックより)
タガメは絶滅種に追加された(2002年の高知県レッドデータブックより)
 レッドリストは「ほ乳類」や「汽水・淡水産魚類」「昆虫類」など九つのカテゴリーで構成されている。改訂案では「絶滅」が計15種で改訂前から3種増え、絶滅の恐れがある「絶滅危惧Ⅰ類」と「絶滅危惧Ⅱ類」が計262種で47種の増加となった。

 飼育下のみで存続している「野生絶滅」は改訂の前後とも該当無し。生息条件の変化によっては絶滅危惧種になる要素がある「準絶滅危惧」は314種(20種減)、絶滅危惧種になり得るものの判定材料が得られていない「情報不足」には220種(48種減)をそれぞれ選定した。

高知市の浦戸湾で釣られた巨大アカメ(2016年6月)
高知市の浦戸湾で釣られた巨大アカメ(2016年6月)
 現行の「高知県レッドデータブック」はアカメについて、「分布の中心地であった浦戸湾と仁淀川において、1950年以前と比較すると数十分の1~100分の1に激減」と記載。原因を、水質汚染▽幼稚魚の保育場の消失や汚濁▽売買目的の幼稚魚の乱獲―と表記している。

 ところが、この位置付けに対しては研究者らから「50年以前の生息数のデータなどが存在せず、根拠が不十分だ」などと疑問視する声があった。

 対象生物の調査や評価を行った7分科会のうち、汽水・淡水産魚類分科会の会長を務めた町田吉彦・高知大学名誉教授によると、アカメを絶滅危惧種とするデータはなく、「高知県沿岸30カ所以上の広い範囲での生息記録を確認した」という。

 絶滅種には、タガメのほか、甲虫の「ヤマトオサムシダマシ」とチョウの「チャマダラセセリ」を追加した。昆虫類分科会の中山紘一会長(高知昆虫研究会会長)によると、3種とも高知県内で20年以上確認されておらず「水田の耕作放棄や水質環境の悪化などが原因だろう」としている。

 また環境省が2012年に絶滅種としたニホンカワウソは、「目撃情報が現在も報告されている」「絶滅したかの判断が困難」などの理由で、引き続き絶滅危惧種と位置付けた。

 今回のレッドリストは、高知県内の専門家らで構成する改訂委員会(委員長=町田名誉教授)が2014年度から3年間の実態調査などに基づき策定した。5月28日までパブリックコメント(意見公募)を行い、年度内に新たなレッドデータブックとしてまとめ、発行する。

 高知県環境共生課の三浦裕司課長は絶滅危惧種の増加を受け「生物多様性を次世代に引き継ぐため、啓発の中心となるリーダー養成などに力を入れていきたい」としている。

 改訂案は高知県Webサイトや高知県庁県民室などで閲覧できる。パブリックコメントは電子メールか郵送、ファクスで受け付ける。問い合わせは高知県庁 環境共生課(088・821・4842)へ。


アカメは幻じゃない…!? 乱獲を危惧する声も
 「幻の魚」と呼ばれるアカメ、実は幻ではない…!? 4月28日に公表された高知県レッドリスト(動物編)の改訂案では、絶滅の恐れがあるリストから除外された。高知県内の研究者や釣り人の評価は、「データに基づく妥当な評価」の意見が目立つ。今後の乱獲を危惧し、「相応の保護策を」の声も聞かれる。日本三大怪魚とも言われる、釣り人憧れの魚。リスト除外の措置は注目度も大きい。

 アカメは高知県や宮崎県などを中心に生息し、1メートル以上に成長する。釣りの対象として人気は高いが、宮崎県は2006年から条例で捕獲を禁止。このため高知県には近年、アカメに憧れた釣り人が全国から訪れる。

 今回の見直しのため、高知県内の研究者や愛好家でつくる「アカメと自然を豊かにする会」(長野博光代表)などが生態調査やデータ収集を行ったところ、現行のレッドデータブックが幼稚魚を育む環境とする「アマモ場」以外の水草の群落でも育っていることが分かった。

 さらに「高知県内で5カ所」とされていた生息地も、釣りや定置網による情報などから、沿岸全域に広がっていると判明したという。

 長野代表は「やっとデータに基づく正しい評価がされた。うれしい」と見直しを歓迎した。一方で「売買目的でごそっと捕る乱獲が心配」とも。アカメは原則として高知県の許可なく捕獲・採取することを禁じる「指定希少野生動植物」の候補に挙がり、専門家の賛否が割れて指定が見送られたこともある。

 レッドリストへの選定に捕獲を規制する効力はないものの、「幻の魚」や「絶滅危惧」といったイメージが釣り人らの乱獲を防いだ面もある。長野代表は「高知の豊かな自然を体現する魚として、これからは高知県民の意識で守っていきたい。その上で、幼稚魚が集中して育つ特殊な生態に見合った保護策も必要だ」と訴えている。

 高知市種崎の漁具製造業、植村壮一郎さん(33)は「近年は5月以降のシーズンで毎日のように釣れるのを見る」という。植村さんは2016年、浦戸湾内で60匹以上のアカメを釣っており「他の魚を狙っていて邪魔される“被害”も出るほど。数はかなりおる。普通種が妥当」と話した。

 アカメは国内の限られた地域にすむ日本固有種。記録魚が釣れれば“世界記録”として注目される。

 人気漫画「釣りキチ三平」で巨大アカメが登場する舞台となった高知県西部の四万十川には、毎年5月ごろから県外の遠征組が多く訪れるという。

 四万十市古津賀の中村フィッシングの担当者は「見た目が格好良く、限られた場所でしか釣れないアカメは、釣り人にとって特別な存在。弱らせないよう、釣っても水から上げないなどの扱いは、『普通種』になっても変わらないのでは」と話す。

 今回の見直しで、改訂委員会は絶滅が危惧される区分とは別に「注目種」の枠を新設。高知県では身近でも全国的に希少なアカメなど17種を指定し、周知する狙いだ。

カテゴリー: 社会環境・科学


ページトップへ