2017.04.21 08:20

連載を終えて エリンちゃんに聞く 「発達障害」決め過ぎないで

桜を見上げるエリンちゃん=左=とメイシーさん。高校に入り、母娘で語り合う時間が増えた(高知市の針木浄水場)
桜を見上げるエリンちゃん=左=とメイシーさん。高校に入り、母娘で語り合う時間が増えた(高知市の針木浄水場)
 連載「続エリンちゃんは不思議ちゃん」では2017年1月から15回にわたり、高知県内で暮らすアスペルガー症候群の女の子エリンちゃんの中学時代を振り返った。自らの思いを文章につづることは「チャレンジだった」とエリンちゃん。連載を終えた今、発達障害の子どもたちに関わる大人たちにこう願う。「発達障害の子」ではなく、その子自身を見てあげてください―。 

 ■壮絶な2年
 桜がちょうど満開を迎えた4月中旬、高知市内でエリンちゃんと母親のメイシーさん(47)に会った。エリンちゃんは高校生。メイシーさんに似てすらっと背が高く、優しい笑顔が春の装いによく似合う。だが、そんなふんわりした雰囲気からは想像できないほど、中学時代は激しさを極めた。

 中学での不登校は1年の2学期に始まった。人間関係の不安やストレスから対人恐怖が強まり、外出もままならなくなった。家に閉じこもり、エネルギー全てをメイシーさんにぶつける毎日。昼夜となく「ママが悪い」と叫んでは、物を投げた。家の中は食器やガラスの破片が散乱し、ぐちゃぐちゃだった。

 「あのころはパニックになり、爆発するのが癖になってました。ママが泣きながら部屋を片付けるのを見て、また腹が立って…」

 そんなエリンちゃんをメイシーさんは落ち着かせることができず、次第に追い詰められた。命の危険を感じ、児童相談所に電話したことさえあった。2人が「よく生きちょったよね」と振り返るほど壮絶な日々は2年間も続いた。

 ■客観的に
 エリンちゃんが小学1年の時、2人は交換日記を始めた。仕事が忙しい中、母娘の絆を深めようとメイシーさんが発案。学校に行けなくなったエリンちゃんが「心がなくなるかもしれない」とSOSを出したのも交換日記だった。思いを書きつづることで、気持ちを整理する。メイシーさんにとって、執筆にはそんな一面もあった。

 そうやって書きためた文章を新聞で発表したのは「発達障害は決して特別なことじゃない」という思いからだった。「周囲が少し関わり方を変えれば、発達障害の子は暮らしやすくなる」「私が死んだ時、エリンが暮らしやすい社会になっていてほしかった」とメイシーさん。多くの人に関心を持ってもらうため、絵が好きなエリンちゃんが4こま漫画を描くことになった。

 初回の連載は2013年。エリンちゃんは思春期の混乱のまっただ中で、記者も会うことはかなわなかった。自分の日常生活が明かされることについては、「毎日が大変で、それどころじゃなかった」とエリンちゃん。ただ、絵を描くのは楽しく、夢中で描いた。
 続編では4こま漫画に加えて、自分の文章を発表することにも挑戦した。支えとなったのは「変わりたい」という思い。「やらずに終わるより、挑戦した方がいい。大人になったというか、客観的に自分を見られるようになったと思います」

 ■まっ、いいかって…
 高校生になると、先生や友達などエリンちゃんに関わる人々が増え、母娘に穏やかな時間が流れるようになった。外出が増え、2人で好きなアーティストのコンサートに行くようにもなった。

 それでも、折に触れ「発達障害だ」ということを思い知らされるという。「やっぱりコミュニケーションが苦手」とエリンちゃん。一対一なら大丈夫だが、複数の友達と話す時は「誰と何を話したらいいか分からない。空回りして、微妙な空気にしてしまう」。通常ならたわいのない失敗でも、長ければ半年くらいは引きずるそう。「『まっ、いいか』って思えたら楽なのは分かってるけど、どうしても思えないんです」

 高校でも人間関係での悩みは続いているが、「好きな絵を生かし、デザインの仕事をしたい」という夢ができた。「今の自分が社会に出てやっていけるか自信はないけど、頑張るしかない」。そう語る表情はりんと輝いていた。

 幼稚園のころから集団生活になじめず、「不思議ちゃん」と呼ばれた。小学校で不登校になり、中学校では苦しみながら発達障害に向き合った。自身を振り返り、エリンちゃんは「私たちを『発達障害の子』と決め過ぎないで」と訴える。

 「同じ発達障害でも一人一人違う。私の話が他の子に当てはまるわけじゃない」「発達障害の子をがんがん怒っても意味がない。その子の良さがなくなってしまうだけ。したいようにさせて、その子自身の性格を見てあげてください」

《寄せられた感想から》
 
 連載に寄せられた感想を紹介します。

頑張らなくていい
 ■当事者より
 「20代で発達障害と診断されました。小さいころは友達から変な目で見られたり、何となく浮いてしまったり。今では冗談もだいぶ分かるようになり、『変わった人』と言われると、『輝く個性の持ち主です』と言い返します。エリンちゃん、頑張らなくていいから、生きてるだけでも丸もうけということを忘れないで」

 「私は発達障害の診断は受けていませんが、友達や恋人はいません。昔は無愛想な職人気質が許される時代でした。現代はあらゆる産業で高いコミュニケーション能力を求められることが、発達障害を浮き上がらせる要因になっていると思います」

本当は優しい子 適度な譲歩を
 ■保護者より
 「わが子も発達障害です。人様から見れば小さなことで心が傷つき、一日の終わりには心も体もぐったり。私はお風呂で泣きます。お風呂だと、涙もお湯も同じお水ですから。エリンちゃんとお母さんが勇気を持って伝えているのはなぜなのかを考えることは、この社会で生きていく私たち全員にとって、とても大切なことではないでしょうか」

 「不登校や家庭内暴力がきっかけで、わが子の自閉症スペクトラムが分かりました。本当は優しい子ですが、今は怒り、暴力を振るう顔しか浮かびません。わが子の心に誰かの気持ちが伝わることはあるのでしょうか。家族でまた笑い合える日はくるのでしょうか」
 「友人に発達障害の子どもがいます。エリンちゃんの絵による心の描写には胸が痛くなります。友人もいろいろなことに行き詰まりを感じているようです。小学校と違い、中学校には発達障害に関心や理解が感じられない先生が多いように思います」

 「わが子も発達障害で不登校です。先生も親も本人も、学校に行けるようになりたい。問題を乗り越えるための提案も、一歩間違えば『わがままな親子』になってしまいます。形はどうあれ、わが子に時間を割いてくださる先生方に感謝しつつ、適度な譲歩を覚えて、日々対応していく毎日です」

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