2017.04.21 08:15

【衆院区割り勧告】制度改革はなお途上だ

 ガラス細工のようなもろさがなお色濃く漂う。憲法の要請に堪え得る抜本改革はまだ途上である。
 最高裁判所から「違憲状態」と指弾されてきた衆院選の「1票の格差」是正へ、衆院選挙区画定審議会(区割り審)が区割り改定案を勧告した。2020年見込み人口で最大格差を2倍未満とした。政府は関連法案を今国会に提出する。
 小選挙区の「0増6減」などを盛り込み、2016年5月に成立した改正公選法を踏まえ、改定案は定数1減とする青森など6県を含む19都道府県で区割りを見直す。改定対象は計97選挙区に上る。
 2009年、2012年に続き、高知県を1減とするなど「0増5減」の改定により最大2・13倍で実施された2014年12月の衆院選まで、最高裁は3回連続で違憲状態と断じた。最低でも2倍を超えれば実質は「違憲」だという明確な警告だった。
 憲法が求める投票価値の平等を守れという、司法からの最後通告への答えと実現を政府、国会は迫られているのである。
 勧告は直近の2015年国勢調査に基づくと最大格差1・956倍、2020年見込みの試算で1・999倍に縮まるとした。2倍未満に抑えようとした腐心のほどは読み取れるが、このぎりぎりの数字がどれほどの確実性、説得力を伴うというのか。
 日本全体の人口減少が続き、東京一極集中をはじめ地方から都市部への人口流出の歯止めも見通せない。人口の偏在や地域間格差の一層の広がりは容易に想像できる。
 区割り改定は1994年の小選挙区制度導入後、3回目となる。衆院選のたびに違憲訴訟、司法判断、区割り見直し―という対症療法が続けば、民主主義の根幹を成す選挙制度の安定性は損なわれる。市区町村の行政区を割るような小選挙区の線引き変更の繰り返しも、有権者を惑わせるばかりで、政治、選挙離れを引き起こす。
 与党は今回の改定議論に際し、都道府県への議席配分に人口比をより反映しやすいとされる「アダムズ方式」の採用を、2020年国勢調査へ先送りした。影響を受ける所属議員への配慮を優先した政党の思惑が透けて見える。
 人口比例のみに基づく議席配分は、現状では地方削減、都市偏重を生みやすい。「地方がないがしろにされる」との懸念は確かに強いが、その問題は参院改革とセットで解決策を探っていくべきだろう。
 高知県は前回衆院選で小選挙区定数が3から2に減り、2016年参院選では徳島県との合区を余儀なくされた。高知県民は猛反発し、投票率は全国最低に沈んだ。一方で、「地方の声をどう守るか」という課題が改めて提起され、改憲も選択肢に国会議論が本格化したのも事実だ。
 現行の衆院選制度は小選挙区の死票など、格差問題以外にも課題を抱える。政権、政党の利害や選挙戦略の思惑を排した議論でなければ、制度改革の解は見いだせない。
カテゴリー: 社説


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